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2015.09.29

ワーキング・ペーパー(15-003E) 「Do Credit Market Imperfections Justify a Central Bank's Response to Asset Price Fluctuations?」

本稿はワーキング・ペーパーです

 金融政策の古典的議論のひとつとして、「資産価格変動を考慮した金融政策運営の有効性」がある。この背景には、日本の1990年代のいわゆる「失われた10年」や2007年後半の金融危機など大きな景気後退の際には、事前の資産市場の過熱による資産価格高騰と、その終焉による急激な資産価格下落が伴っていることがあげられる。この問題に対して、筆者を含め、これまでにも多くの経済学者が様々な研究を行ってきた。金融危機以降、「金融市場の不完全性」の重要性に注目が集まっているが、既存研究では、金融市場の不完全性の存在そのものが資産価格変動を考慮した金融政策の有効性に果たす役割や、金融市場の不完全性の度合いが政策の有効性に与える影響については焦点が当てられていなかった。


 そこで本稿では、金融市場の不完全性として、企業の運転資金借入がその企業の保有する資産の価値に制約を受けるニューケインジアン・モデルを構築し、金融市場の不完全性の大きさと資産価格変動を考慮した金融政策の有効性との関係について分析を行った。とくに本稿では、資産価格変動を考慮した金融政策の効果について、金融市場の不完全性の程度が小さい場合と金融市場の不完全性が大きい場合のそれぞれで検討を行った。その結果、本稿が使用した理論モデルでは、不完全性の程度が小さい場合には資産価格変動を考慮した金融政策は経済の安定化(均衡の決定性)に貢献する一方、金融市場の不完全性が大きい場合には資産価格変動を考慮した金融政策は経済の不安定化(均衡の非決定性)を引き起こす原因となる可能性があることを理論的に示した。また、金融市場の不完全性の改善は必ずしも経済の安定化に貢献するわけではなく、逆に不安定化を招く(均衡の非決定性領域を広げる)場合があることも明らかにした。


 本稿の結果は、資産価格変動を考慮した金融政策運営の有効性が金融市場の不完全性の大きさに依存して変化することを示しており、政策当局はそれらの事情も勘案したうえで政策を立案していかなければならないといえる。




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