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2015.05.12

ワーキング・ペーパー(15-001E) 「Bank Behavior in Regional Finance and the Development of Regional Industries:The Case of Prewar Fukushima, Japan」

本稿はワーキング・ペーパーです

 今日、地域経済の活性化のために地域金融機関の役割が問われている。これは必ずしも新しい問題ではなく、戦前以来の日本の経済発展の過程で繰り返し問われてきた。特に、大規模な銀行合併の波が生じ、支店銀行制度が発達した1920年代には、この問題が大きな論点となった。

 小規模な地域金融機関の役割については、多くの理論的・実証的研究があり、すくなくとも2000年代前半までの米国については、次のような見方が広く受け容れられている。すなわち、事業内容の透明性が低い小規模な企業については、その地域で営業している小規模な金融機関が、複数地域で営業している大規模金融機関に対して情報面での優位性を持っている。銀行合併の結果、複数地域で営業する大規模金融機関が成立した場合、こうした金融機関は取引関係に基づく「ソフト」な情報に関して不利であり、したがって地域の小規模事業は信用を得ることが難しくなる。

 注目すべきことに、同様の見解と懸念が、1920年代の日本で政府当局等によって表明されていた。また、日本経済史の文脈では、中村隆英が古典的な書物において、第一次世界大戦後における「不均衡成長」(近代セクターと在来セクターの間の不均衡な発展)への移行に関して、この問題に着目している。

 本論文では、1910~20年代の福島県について、銀行の本支店別の預金・貸出データを用い、地域金融機関と他地域に本店を持つ銀行の支店の間における、預金・貸出行動の相違を検証した。その結果、他地域に本店を持つ銀行の支店は、地域金融機関より貸出性向が低いことが確認された。また、織物業に関する郡・市別データを各地域における他地域銀行支店の預金者シェアのデータと統合した分析によって、他地域銀行支店の預金シェアの上昇が地域における織物業の生産と雇用に負の影響を与えたことが明らかになった。




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