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2018.11.28

ワーキング・ペーパー(18-004E) 「Why is the shape of the Laffer curve for consumption tax different from that for labor income tax?」

本稿はワーキング・ペーパーです

 「ラッファー曲線」とは、1974年のアーサー・ラッファー氏の発言に由来する経済学用語である。高すぎる税率は経済活動を抑制し、むしろ税収を減らす可能性があるため、横軸に税率、縦軸に税収をとると、そのグラフは逆U字型をしていると考えられてきた。実際にマクロ経済モデルから導出される労働所得税や資本所得税のラッファー曲線は逆U字型をするが、近年の複数の研究で、消費税のラッファー曲線は、逆U字型ではなく、右上がりの形状をしていることが報告されている。

 財政学・公共経済学の分野では、伝統的に「消費税と労働所得税の同値性」と呼ばれるものがある。これは、ある消費税率のもとで達成される経済の均衡配分は、ある労働所得税率によっても達成可能であることを意味する。しかしながら、ラッファー曲線の既存研究によれば、税収の観点からはこの消費税と労働所得税の同値性が成立しないことが示唆される。

 本研究では、消費税と労働所得税がなぜ税収の観点では同値でないかを明らかにするために、標準的な新古典派マクロ経済モデルを用いて、消費税と労働所得税の増税がそれぞれの課税ベースに与える効果についての分析を行った。どちらの税も、「(消費財に対する)余暇の相対価格」を低下させることで、労働供給と消費を押し下げる効果を持つ。本稿では、「余暇の相対価格が増税に対してどれほど低下するか」が、消費税と労働所得税とで全く異なることを発見した。消費税の場合、税率を1%上昇させても余暇の相対価格はたかだか1%しか低下しない。一方、労働所得税の場合、増税によって余暇の相対価格は1%よりも大きく変化しうるため、労働供給が大幅に低下してしまう。この増税に対する余暇の相対価格の変化の違いが、消費税と労働所得税のラッファー曲線の形状の違いの原因であることを明らかにしたのが、本研究の貢献である。

 本研究の結果は、消費税と労働所得税のラッファー曲線の形状違いを理論的に説明するだけにとどまらない。近年の多くの理論・実証分析で、消費税のほうが労働所得税よりもマクロ経済に与える悪影響が小さいことが指摘されている。本研究で明らかになった「余暇の相対価格への影響」の違いは、なぜ消費税のほうが労働所得税よりも望ましいか一つの理由として解釈することが可能である。




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