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2017.03.22

ワーキング・ペーパー(17-003E) 「Regional Business Cycle and Growth Features of Japan」

本稿はワーキング・ペーパーです

 本稿の目的は、内閣府経済社会総合研究所が取りまとめている県民経済計算を用い、日本の県レベルにおける景気循環と経済成長の特徴を考察することである。県レベルのデータを用いることにより、集計した経済全体のデータでは見ることができないような特徴を分析する。

 県民経済計算を用いた先行研究としては、Barro and Sala-i-Martine (1992)、van Wincoop (1995)、Shioji (2001)、Nakakuki and Fujiki (2005)、Artis and Okubo (2011)など数多くある。本稿では、データ期間を延長し、先行研究と同様の分析を行った。分析の対象期間は、支出面については1955年から2008年、分配面については1975年から2008年までとした。なお、県民経済計算は2009年以降も利用可能であるが、全体の期間において統計的に強い影響を与えてしまう可能性の高いリーマン・ショック以降のデータを除いて考察することとし、2008年以前の統計的性質に注目している。

 主要な結果は以下の通りである。第一に、1975年から2008年において、二県間の生産量の相関は、産業構造が似ているほど高く、また距離が近いほど高い。この結果は、Artis and Okubo (2011)による1955年から1995年についての分析と同様である。第二に、Backus, Kehoe and Kydland (1992)やBaxter and Crucicni (1995)において、国同士の関係で指摘されたconsumption-output puzzleが日本の県と県の間でも観察された。consumption-output puzzleとは、開放経済のreal business cycle modelで予想される理論的な結果とは異なり、消費の相関が、生産量の相関より低いことを言う。この結果は、県間におけるリスク・シェアリングに問題があった可能性を示している。第三に、Nakakuki and Fujiki (2005)に従い、消費のリスク・シェアリングを、県間の資本市場に起因する部分、政府による再分配に起因する部分、地域内・地域間の信用市場における貯蓄・貸出に起因する部分の三つに分解した。先行研究であるNakakuki and Fujiki (2005)と比較して、信用市場における貯蓄・貸出に起因するリスク・シェアリングが小さく、金融市場の不完全性がconsumption-output puzzleの主要因をしめている可能性が示唆された。先行研究と得られた結果が異なる要因は、先行研究おいては当時利用できなかった新しい情報を利用して、できる限り県民経済計算に基づいて期間を延長したことであると考えられる。



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