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「薬価の経済学」

「薬価の経済学」

  • 編著 小黒 一正 他
  • 出版社 日本経済新聞出版社
    ISBN 9784532134860
    価格 本体3,000円+税
    発行 2018年7月初版

    ◆少子高齢化や人口減少が進む中、低成長の日本経済が抱える最も重要な課題は「財政再建と成長の両立」であるが、この象徴的な事例の一つが「薬価制度と医薬品産業」であろう。実際、次のような意見が頻繁に聞かれる ―― 財政再建のために薬価の引き下げ等で医療費を抑制する必要があるが、医薬品の研究開発には巨額の投資がかかり、これ以上の薬価引き下げは、創薬ベンチャーといった新産業の創出を益々困難とし、日本の医薬品産業が激しいグローバル競争に完全に敗北してしまうのではないか。しかし、その一方で、次のような意見も多い ―― いや、これまで「ぬるま湯」体質に浸ってきた日本の医薬品産業は非効率で改善の余地が沢山あり、財政再建のために薬価はもっと引き下げられる。こういった対立する意見が混在しており、どちらの意見が真実に近いのか、判断が難しい。


    ◆国民医療費40兆円の4分の1を占める薬剤費。財政再建の観点から、政府・与党は低価格のジェネリック医薬品の普及を促進しているが、本書で紹介する実証分析の結果によると、使い慣れた薬の変更に対する抵抗感などがあり、高齢化の進展はジェネリック利用率の低下要因となる可能性も示唆される。正しい改革を実行するためには、実態や本質を正しく把握し、正しい処方箋を打つ必要がある。高額ながん特効薬オプジーボが最近は話題となったが、保険医療制度をはじめ、日本の薬価制度は非常に複雑で、その実態や本質を浮き彫りにすることは容易ではない。


    ◆しかも、いま薬価制度は、厳しい財政事情や医薬品産業のグローバル化などの影響を受け、様々な構造的な問題を抱えている。例えば、財政との関係では、医療サービスの公定価格である「診療報酬」の改定を医療費抑制の手段に用いることが多いが、国の2018年度予算編成では、医師の技術料等に相当する「診療報酬本体」の改定率は0.55%増と6回連続のプラス改定となる一方、医薬品の公定価格である薬価部分はマイナス1.65%の改定となり、診療報酬全体で1.19%の引き下げとなった。診療報酬の改定は2年に1回行われ、報酬全体の引き下げは、2016年度改定から2回連続となったが、財政再建との関係で持続可能な医療制度を構築するためには、診療報酬本体との関係も検討する必要があろう。


    ◆一方で、医薬品産業はグローバル化で世界的な業界再編が進む。日本の医薬品企業は欧米の「後塵を拝している」のが現状である。医薬品の世界市場は2015年で約100兆円、今後5年は年率3-6%で成長することが見込まれる有望市場であり、帳尻合わせの薬価制度改革であってよいはずがない。また、iPSやゲノム等の新たな技術フロンティアを活用する医薬品市場において世界は激しい争奪戦を繰り広げているにもかかわらず、日本の医薬品企業がこの競争に完全に敗北することになれば、人工知能を活用したデータヘルス等の新産業や雇用創出を含め、その損失は計り知れないものとなろう。


    ◆本書は、研究者や医療関係者で、薬価制度の分析と改革に最前線で取り組んできた第一人者たちがタッグを組み、現在の仕組みに内在する問題点を分析、ビッグデータ活用などイノベーションも紹介し、あるべき将来像を提言する。


    ◆膨張する社会保障費に改めて注目が集まる中、注目の一冊。

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