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2017.11.01

反作用の時代

  • 岡本行夫
  • アドバイザー
    岡本行夫

 作用には反作用がある。押し込めば、同じだけ反撥が生じる。屈服させられても、押さえつけられた怨念や屈辱は再び歴史を揺り戻そうとする。

 いま世界中はバラバラだ。プーチンのロシアと習近平の中国には、ステータス・クオを力で変更しようとする帝国主義体質があらわだ。金正恩の北朝鮮は、核の力を借りた露骨な威嚇外交だ。

 プーチンは、来年の大統領選で圧勝した後、2024年に任期を終えるが、そのとき彼はまだ71歳。スターリンやブレジネフやチェルネンコは70代半ばまでやった。強い権力主義者であるプーチンが、2024年に引退するとは思えない。憲法を改正してもう一期、大統領をやるとすれば、彼は2030年まで皇帝でいることになる。

 習近平は、共産党のルールに従えば、2022年の党大会で引退だが、最近の彼の人事を見ていると、ルールは棚上げし、もう一期、2027年まで最高権力者の地位にとどまろうとするのではないか。

 金正恩は、暗殺されない限り、この先何十年も君臨する。つまり、2020年代はこの3人の独裁者たちの時代が続くのではないか。

 3人に共通するテーマは「復活」だ。プーチンは、89年のベルリンの壁崩壊以来、米国主導のNATOに押し込まれたロシアを再び強く復活させることが目標だ。習近平の目標は、同じく89年に起こった天安門事件以来の高度成長の中で生じてきた歪みと腐敗を正し、さらに大中華帝国を復活させていくことだ。習近平は2013年の国家主席就任演説で、「中華民族の大復興の夢」と10回近く繰り返した。「復興」とは、中国がかつていた、今より高い場所に戻すことを意味する。いつ頃を念頭においているのか。清の乾隆帝の時代だろうか。「一帯一路」で中国が目指すユーラシア大陸制覇の戦略がこれに重なって見える。

 金正恩の場合は、もっと破壊的だ。彼が尊敬してやまない祖父の金日成は、1950年、怒涛の如く韓国に侵入し9月には釜山にまで迫っていた。あとわずかで、朝鮮半島全体が平定できるはずだった。それを妨害したのは、米軍を主体とする国連軍だ。9月15日のマッカーサーの仁川上陸作戦によって戦局は変わり、北朝鮮軍は鴨緑江まで追いつめられた。憎き米国さえいなければ、北朝鮮にとっての偉業が達成されていたはずである。

 一方、民主主義陣営で起こったトランプ大統領誕生やBrexitは、冷戦構造の崩壊によって始まったグローバリゼーションへの反作用だ。著しく豊かになった人々と、僅かしか豊かにならなかった人たちの間に大きな格差がつき、下に沈んだ人たちから猛烈な反作用が起こった。

 これまでの様々な国際事象をみると、反作用の期間はだいたい20年くらいかかることが多い。となると、反作用の時代が2010年代初めから始まったと見れば、なお10数年間、我々は世界を覆うどんよりとした曇り空と、時々発生する濃霧の中を生きていかなければならない。地政学的には陰鬱な時代だが、科学技術や文明の転換には、もっとマシな世界への方向性も見えている。それを希望にしよう。

(文中敬称略)

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