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2016.07.01

社会に出る

  • 福井 俊彦
  • 理事長
    福井 俊彦

 国際情勢が目まぐるしく変転する一方、国内では少子高齢化が厳しく進む状況の下で、将来の望ましい日本の姿を考えると、経済の面でも、外交・安全保障の面でも、確りと重責を担って行く若者を多数輩出することが肝要である。今こそ「教育」が大切だと言われる所以である。

 日本の教育制度は決して他国に引けを取るものでないとされているが、本当にそうか。

 高度成長の過程で何時しか日本企業の強さが当然の前提となってしまって、学校を出ると次は有力企業に入ることが普通のコースとなってしまった。そのため、優等生教育が前面に押し出され、思索する教育が置き去りにされる傾向が強まっている。今、「就活」と呼ばれる現象の中にもその旋律が耳に響いて来る。学校が終われば次は社会に出る、という感覚が失われてしまった。「社会」が逆様になって「会社」、「出る」が逆様になって「入る」になっていないか。学校の先生や企業の経営者にも責任があるが、子育てに当たった両親の責任が一番重い。社会に出て、モノを考えつつ新しい課題に挑戦する、独立の気概をも持たなければ、そういう若者に日本の未来を託す訳には行くまい。世にいう教育改革の根本意識はここに置かれなければならない。

 では、これからの日本にとって、何が一番大切か。

 第一に、知的な源泉を深掘りして新しいイノベーションを進展させ、経済の基盤を強固に築いて行くとともに、その息吹を世界に発信して行く。

 第二に、秩序と安寧の確保、地球温暖化問題など世界共通の課題に対しては、その責任をシェアーするよう世界の友人に働きかけるとともに、自らの責任を率先して果たす。

 第三に、日本の最大の脆弱性と目される国家財政の健全化を進めて世界からの信認を繋ぎ止める。その過程で世代間の受益と負担の公平性を均すような社会保障制度の改革が欠かせない。

 このように考えると、若者には内向きでなく進取の気性が、高齢者にも相当な我慢を受け入れる覚悟が求められる。

 消費税率引き上げ先送りなど国民に甘いことばかり囁いて政府への依存心ばかり煽るのでなく、むしろ老若男女に辛いことを受け入れて貰えるよう説得力を効かした政治運営がまず必要である。日本が将来に向けて今正に岐路に立っていることを正しく認識すれば、日本の民意も、相応の負担を受け入れる程度には成熟しているのではないか。