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2014.01.09

歴史の延長線上に歴史を築く

  • 福井 俊彦
  • 理事長
    福井 俊彦

 第一次世界大戦勃発後100年目の新年を迎えた。数多の戦争は地球上の生存競争の厳しさを物語っている。今、世界戦争再発は予見されないものの、グローバル化と情報通信革命の進展を軸に世界の潮流が怒涛の如く変化し、生存競争自体は益々熾烈化している。

 わが国は、2020年の東京オリンピックを如何なる姿で迎えるのか。中国経済躍進の蔭で存在感が著しく後退している懸念も無しとしないが、その頃、日本、韓国、中国の経済を併せてみると米国経済をも上回る勢力となっている可能性が大きい。日本は、この大きな東アジア経済の中で心臓部分を受け持ち、脈々たる鼓動を送り出しながら世界をリードし、責任を担うことが可能なのではあるまいか。そのために何をなすべきか。

 第一に求められるのは、先端を切り拓いて前に進む力を圧倒的に強くすることである。
(イ)とくに民間企業において、内外の知的人材を活用し、切磋琢磨の中から知識創造をベースとしたイノベーションの力を伸ばすことが肝要である。
(ロ)また、農業、林業、漁業を若者が担うことを可能とし、地域コミュニティーを再興することが望まれる。
(ハ)更に、女性の社会進出と、子育てを容易にする条件を整えること。人口動態の変化の中でわが国として総力戦の体制を整えなければならない。

 第二に求められるのは、撃たれても揺るがない頑健な経済基盤を築くことである。
(イ)信頼の置ける中期財政再建計画を早期に樹立するとともに、不可分の一体として社会保障制度を抜本的に改革することを欠かす訳には行かない。この作業を通じ、受益と負担の公平性をめぐる真剣な議論を人々の間で呼び起こすことに成功すれば、社会において新たな連帯感を呼び起こすことも可能となろう。
(ロ)そして、将来の時間軸に沿って環境政策と整合性の取れたベストエネルギー・ミックスを想定した上、新しいエネルギー基本計画を確立することを急がなければならない。

 目を転ずれば、わが国の将来には、海洋開発の展開という非常に大きな「夢」がある。

 勿論これを標的として外から攻め込む動きが出てくることは想定されよう。相応の自衛力を備えるとともに、妨害の動きを「不当だ」と云ってくれる海外の仲間を増やすため、戦略的な外交展開が普段から必要となる。

 これを要するに「日本をどういう国にするか」、われわれ一人一人が真剣に考え、行動することが大切である。戦後は、取り敢えず、経済再建を最優先課題としたが、その先、新しい国作りをどうするかについては、必ずしも十分に国民的な議論を経ていない。この点は、戦後における歴史教育の欠落とも深く関連しており、「歴史の延長線上に新しい歴史を築く」という出発点を欠いている。

 先ず、日本人自身の歴史認識の土台を確りとさせ、新しい国家像を描くことから再スタートしなければならない。国際社会における日本の位置付けを明確にして、果たすべき責任を果たす。そうした日本の姿が海外からも認識されるようになれば、(日本人が何を考えているか)グローバルな情報発信力も自ずと強化されて行くこととなろう。