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2013.06.04

折れてはならないアベノミックスの矢

  • 福井 俊彦
  • 理事長
    福井 俊彦

 第一の矢、第二の矢に続き、人々は第三の矢を「今や遅し」と待ち焦がれている。

 狙い通り、日本経済を執拗なデフレから脱却させ、持続的な成長の軌道に乗せて行くためには、いずれの矢も、堅固に保たれ、途中で折れるようなものであってはならない。

 第一の矢は、次元の異なる金融緩和という仕立てで黒田新総裁のリードで既に射放たれ、株式市場や為替市場への影響を通じて、企業家心理や消費者マインドにも効果を及ぼし始めている。この矢が最後まで頼むに足りるものであるためには、根本の軸が確りしていなければならない。根本の軸とは何か。財政政策との峻別が揺るぎないものであること、将来の円滑な出口戦略について策が秘められていること、この二点である。

 第二の矢は、財政政策であるが、わが国財政の健全性は国際比較で見ても相当見劣りする状況にあるので、これ以上短期的な景気刺激策を積み重ねるのでなく、既定方針通り消費税の引き上げを行なうとともに、信頼のおける中期再建計画を早期に確立することが大切である。これには社会保障制度の抜本的な改革を伴うことが不可欠である。この基礎工事を怠ると、ある日突然国債価格が暴落し、脆くも矢が折れてしまうリスクがある。

 第三の矢は、成長力強化のための構造改革であるが、民間部門において活発なイノヴェーションを呼び起こすことが狙いであるので、この矢に関する限り、人々が専ら政府の施策を待つというのでは心許ない。先ず民間部門においてどういうイノヴェーションに挑戦するのか、そのためにどういう人材を新規に集積し、どういう新しいビジネスモデルやビジネスネットワークを組成するのか、を明らかにし、政府はこれをどの側面からサポートすべきか、切り口を示すことが大切である。民間部門が先行しないと、構造改革はこれまでの通り政府部門の作文の繰り返しに終わってしまう心配がある。

 このようにして三つの矢が上手く束ねられて行くにつれ、人々は更にもう一本の矢が必要と認識するに違いない。

 第四の矢とは何か。それは新しいエネルギー基本計画である。競争力の強い日本経済を再構築していく上に、サプライサイドからの支え、とくにエネルギー供給の面で不安がないことが欠かせない要件となろう。供給量、コスト、安全性、自給率など多角的な尺度を当て嵌めつつ、将来への時間軸に沿って最適のエネルギーミックスを探り当てる努力が必要である。それに加え、日本のエネルギーミックスは地球温暖化問題への取り組みとも整合的であり、環境政策の面で世界各国の先頭に立ってリーダーシップを発揮して行けるものでなければならない。今直ぐでなく、将来のある時点で、日本は、他国に先駆けて原子力エネルギーから卒業する、再生可能エネルギー開発のトップ・ランナーになる、これこそが真の目標として据えられるべきである。