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2012.07.17

エネルギー基本計画

  • 福井 俊彦
  • 理事長
    福井 俊彦

福島原子力発電所の事故を経験し、現在、政府に於いて「エネルギー基本計画」の見直し作業が進められている。

これまでの計画は、2010年6月に菅内閣の下で策定されたものであったが、私は、それなりに良く出来た計画だと思っていた。2030年を目標として、①エネルギー自給率を倍増させるとともに、②企業部門のみならず家計部門も含めエネルギー利用効率を一層高めるなど地球環境問題への対応策を強化することを明示していたからである。

その狙いを実現するため、エネルギーミックスとしては、非化石電源比率を現状の37%から65%に引き上げる(とりわけ原子力エネルギーの比率を45%まで引き上げる)ことを唱っていた。

現在の見直し作業の内容は、原子力エネルギーを何処まで抑えるか(それに応じ再生可能エネルギーのウエイトを何処まで引き上げるか)が中心である。

政府の下に設けられたエネルギー環境会議は、去る6月8日、総発電量に占める原子力発電の比率を、2030年時点で、0%にする、15%にする、20~25%にする、の三つの案を提示し、国民に選択を求めている。政府としては、8月中にもこの三つの案を篩にかけ、一つの案に絞りたいと考えている模様である。

新しい「エネルギー基本計画」の早期策定が望ましいことは申すまでもないが、エネルギー供給が量的にもコスト的にも長期安定的に確保されることが、今後の我が国経済発展のために欠かすことの出来ない絶対的な条件であることを考えると、国民が今回何を材料に判断するか、この点が極めて重要である。

上記三つの案については、政府から、各案それぞれにエネルギーコストがどのように上昇するか、経済モデルを動かして計算すると各案においてエネルギーコストの上昇が経済全体にどの程度負荷をかけるか、等かなり精緻な材料が提供されている。これは大いに評価したい。

しかし、さらによく考えてみると、グローバル化が急速に進展する現在、我々は地球上において日々厳しい生存競争に曝されている。

中国は、今後原子力発電所を大幅に増設する方向で動いている。米国は、シェールガスの開発を進め、エネルギー戦略上優位性を確立することを狙っている。

こうした中にあって、我々は国内的なコスト計算を精緻に積み上げることだけで確信を持って「競争力十分」との判断に到達出来るかどうか。

やはり、エネルギー戦略やコスト変化の国際的な相対比較を踏まえつつ「勝利の方程式」を解く必要があるのではないかと考えられる。