本文へスキップ

2014.08.11

狭くなる地球とアジア・欧州の距離

  • 林良造
  • 理事・特別顧問
    林良造

 5月に欧州企業のInternational Advisory BoardのGlobal Meetingが南ドイツで行われた。今年は、世界経済における先進国主導型への回帰と新興国の停滞を背景に、今後の新興国の見通しが中心のテーマとなった。


中国

 総じて足腰の弱さが目立つ新興国にあって、中国については、相対的に楽観論が目立った。もちろん、景気の減速は否めず、また、影の銀行などの金融インフラの遅れに伴うリスクは取り上げられていたものの、地理的に遠いせいか、あるいは中国の経済的・政治的な欧州接近を反映したものか、成長の鈍化についても成長率の数字自身は十分に高く巡航速度への軟着陸として好意的にとらえるのが基本的トーンであった。

 このいわばガラス越しに東アジアを見ているように感じさせる距離感は、日本から見ているダイナミズム、リスク、緊張感とはずいぶん異なる。例えば、農村問題・格差問題など中国の抱えている構造問題の奥深さ、構造改革の緊要性と既得権益層の強さ、国内の統治機構・権力構造の不安定性とその中で行われている権力闘争、中国の軍事費の増大と東シナ海・南シナ海における緊張感などの立体感は相当の国際的知識人でも感覚的には理解しがたいようである。考えてみると、日本からは、ウクライナ問題の真相やリスクとそのmanageabilityについて、なかなか実感を伴わないのと同様なのかもしれない。


日本

 このような遠さは、日本に対する見方にも当てはまる。安倍政権の「三本の矢」についても一応知られてはいるが、これが日本の本格的な回復につながるかについては、従来の経験からも懐疑的なニュアンスが付きまとう。6月に向かって進みつつあった成長戦略・骨太の方針の準備状況などを解説していくと半信半疑ながら次第に関心を示すような顔になる。

 また、米国のアジア回帰についても、その戦略的重要性の判断や効果を懐疑的にみている。特に最近の訪日については、日本が得たものは大きい一方、米国はTPPなどで何が成果なのかと酷評であった。欧州・中東におけるオバマ外交の実績や欧州に対する悪影響から無理もないところではあろうが、やはりアジアからの遠さと情報量の少なさの影響は大きいように思われる。


ASEAN インド

 また、ASEANやインドについては、一般的に大きな構造問題を抱える新興国の一部に埋没し十分な注意が払われていないように見える。特に、ASEANなどは基本的には中国の経済的影響下にあり、その成長率の変化に応じて影響を受ける従属的なものとみられている感があった。例えば、China +1としてのASEANの役割やこれまでのSupply Chainとしての蓄積について評価する声は多くはない。さらに、インドからの出席者が強調したにもかかわらず、Modi政権のもたらしうる爆発的な成長の可能性についても、反応は懐疑的なものであった。


 来年は上海で行われることになっているが、そこでどのようなことがホットな話題になり、アジアと欧州の距離がどの程度縮まることになるかが楽しみである。