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2013.06.14

成長戦略を問う・医療産業-創意促す診療報酬制度に-

日本経済新聞「経済教室」掲載(2013年6月7日付)

  • 林良造
  • 理事・特別顧問
    林良造

 安倍晋三政権の成長戦略が次第に明らかになりつつある。医療分野で日本の潜在力を引き出し、国民生活の質的向上を目指すとともに成長のエンジンとするという大きな方向は、民主党政権時代から一貫した流れとなっており、いまや超党派のコンセンサスといえよう。

 世界の潮流を見ると、各先進国とも医療を重点施策と位置づけ、また、医療産業を経済成長のリード役として育成する方向に進んできた。環境整備の面で立ち遅れてきた日本は、制度改革のスピードを上げる実行力と成果につなげる工夫が求められている。

 個別にみると、米国立衛生研究所(NIH)をモデルに、基礎研究から臨床まで一貫した取り組みができる強力な日本版NIHの創設に力点が置かれているようだ。日本版NIH構想はこれまで幾度も取り上げられ、内閣での調整プロセスの一元化や、各種疾病別のナショナルセンターなど研究段階から臨床段階までの一貫した実施機関の整備も試みられている。問題はそれがまだ大きな成果に結び付いていない点にある。

 したがって、形を作るところに精力を割くのではなく、研究を成果に結び付ける仕組み・プロセスを現場が設定して、達成したものが報われていくシステムを、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルの形で組み立て、定着させることこそが重要だと思われる。

 分野別には、iPS細胞による再生医療の実現に相当の注目が集まっているようにみえる。しかし、iPS以外の再生医療や、様々な医療機器、さらには患者一人ひとりに合わせた個別化医療とそのための検査薬、iPSの多面的利用など、幅広い候補分野が広がっている。

 それらの熟度を冷静に判断し、それぞれに見合った臨床研究・治験・審査・診療報酬など最終的成果までのきめ細かい環境整備が必要となる。そのうえで、現実の成果を反映した配分という原則を確立してこそ、日本版NIHによる上流の研究資金の分配機能の一元化も生きることになるのではないだろうか。...




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