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2012.10.23

日本企業のパーフォーマンスと公的年金基金

太陽ASGエグゼクティブ・ニュース(2012年10月号)に掲載

  • 林良造
  • 理事・特別顧問
    林良造

1. 「低リスク低リターン」志向の日本の公的年金基金 

 旧友のジェームス・シン氏(知日派の元・米国アジア太平洋担当国防次官補)から、最近彼が"Institutional Investor"に寄稿した小論が送られてきた。それは、日本の公的年金の積立金運用を任されている世界最大の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人の運用方針が、極端な「低リスク低リターン」志向の保守的・消極的なものであることについて、最近の基金の運用責任者とのやり取りを通じて批判的に紹介したものであった。論旨は、日本の公的年金財政の現状下においてこのような低いリターンに安住していてよいのか、株式投資にも積極的に取り組み、基金として投資先企業の収益力強化に力を入れるべきではないか、というものである。 

 もちろん、この20年間の運用実績によると、外貨や株式よりも国債による運用のほうが、金利は低くとも結局損失は少なかったという経験があり、それは現在にも影を落としている。現に、最近の日経新聞には、多くの企業の年金基金が運用の下振れリスクを嫌い、年金資産に占める株式の割合を減らし、国債や地方債への配分割合を大幅に拡大しているとの記事が1面トップを飾っていた。さらに、現在、成長期待の後退とともに、投資家からの株式市場への資金の流入が世界的に減少しており、起業の資金供給不足の懸念があると報じられている。しかしながら、国債投資に集中している運用方針は、最近の欧州の国債に対する国際資本市場の評価を見ると、決して「低リスク」とは言えないものであることも見逃せない。


2. 「高いリターンと効率的なリスク管理」を求める各国の公的年金基金       

◇年金権利者の利益保護に向けたコーポレートガバナンスのルール作り 

このように、現時点での投資資金の運用の問題は単純に論じられるものではないが、各国で大きな比重を占めることになった年金基金は、株式投資に際して「高いリターンと効率的なリスク管理」を株主の意思として掲げ、企業の行動やさらには各国の経済活動にも大きな影響を与えている。特に公的年金基金は、運用企業の意思が入る企業年金基金と異なり、年金権利者の利益を純化した形で主張しやすいことから、米国などでは、株主のアクティビスト活動(もの言う株主)の先頭に立ち、少数(非支配)株主保護に手厚いコーポレートガバナンスのルールを実現するうえでも大きな役割も果たしてきた。そして、そのルールの下で、株主の意思は、他の当事者の意思と交錯しつつ、企業行動に更なる影響を与えるようになってきている。

 

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