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2017.09.04

新日銀法公布後20年―真の信認の獲得に向けてより一層の努力を―

  • 須田 美矢子
  • 特別顧問
    須田 美矢子

 1996年6月、連立与党の大蔵省改革プロジェクトチームは、過剰流動性やバブルにおける金融政策に過度に依存したマクロ経済政策の誤りを反省し、独立性と政策決定責任をより鮮明にする方向での日銀法改正を次の通常国会へ出すよう提案した。一か月半後、21世紀の金融システムの中核に相応しい中央銀行のあり方について検討するよう総理大臣の要請を受けてできたのが、筆者も参加した中央銀行研究会だ。

 研究会では日銀の改革・日銀法改正の方向性について精力的に一字一句審議し、独立性と透明性を柱に、政策決定の枠組み全般に抜本的な改革が必要との報告書を11月に出した。その後97年2月の金融制度調査会の答申を経て、新日銀法は97年6月に公布、98年4月に施行された。改革が遅々として進まない今日と比べ、連立与党の提案から一年で新日銀法が成立したことは、本気になれば改革が進むことを示している。

 研究会では日銀の独立性を最大限高める努力をしたが、金融政策は経済政策の一環をなすので権限・責任を政府から完全には切り離せず、独立性の具現化は政策委員会に委ねられた。日銀が、世界の金融市場、そして国民からの真の信認を得るためには、日銀の政策運営に携わる人々の不断の努力が不可欠であると報告書を結んだ。

 筆者は新日銀法の生みの親と自負しているが、10年間は政策委員会メンバーとして新法を実践する側にもいた。しかし、20年を経ても研究会で期待した真の信認の獲得までには至らず、最近は信認がゆらいでさえいる。

 研究会には、外部の有識者による政策決定が金融政策の信認を高めるという考え方がもともとあった。専門、知識・経験や考え方が多様なメンバーがそれらを共有し、合意形成を試み、そのうえで政策決定を行えば、大きく間違えず安定的だからだ。

 もっとも、委員の多くがある考え方に偏っている場合には、過半数をとればよいとの姿勢で少数派の声に耳を傾けないと、委員会での決定が極端化する可能性がある。政府は人事面で日銀に影響を与えられるが、このような偏った人事を行えばせっかくの委員会制度による合意形成のメリットは生かせない。

 実際、今の政策委員会は多様性が十分でなく、マーケットや国民が懸念する金融政策の副作用への言及はあまりない。研究会では、バブル経済期には、物価安定下で地価・株価等の資産価格が大きく高騰し実体経済に大きな影響を及ぼしたため、物価だけでなく各種資産価格の変動にも留意する必要性、財政のマネーファイナンスの回避の必要性、市場機能を重視した金融政策の重要性が論じられた。現在、マーケットやエコノミストの懸念も主にこれら課題への配慮が足りない点にあるが、政策委員会が現在の金融政策の懸念材料をマーケットやエコノミストと共有できないでいると、なかなか真の対話につながらず信認はえられない。

 研究会では政策委員会の所掌事項に、金融政策の事後評価を含めた。物価目標到達までの時期の何回もの先延ばしは日銀の見通しや政策への信認をなくし、政策効果も小さくする。中立的な立場から政策効果だけでなく副作用もしっかり分析し、それを共有し、その上で政策運営が行われることを強く願う。