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2015.10.08

「コーポレートガバナンスコード」を活かすも殺すも企業のトップ次第

  • 須田 美矢子
  • 特別顧問
    須田 美矢子

 企業の多くは昨今、「コーポレートガバナンスコード」(以下「コード」と省略)への対応に追われている。昨年、企業統治の強化が成長戦略の第一の柱とされ、その後策定された「コード」は、経営者のマインドを変革し、攻めの経営判断を後押しするためのもので、社外取締役の積極的な活用が必要だとした。また、「日本版スチュワードシップコード」でも、独立社外取締役の活用に目が向けられた。

 その結果、「日本再興戦略改訂2015」では、「複数の独立社外取締役を選任する上場企業が昨年から倍増し」、「長らく社内の人材のみで経営がなされてきた我が国の会社経営の在り方が一変し、積極的に社外の知見・経験を活用し、短期間に競争環境が激変する変革の時代を切り拓いていく準備が整いつつある」とした。

 しかし、「コード」への対応で、企業マインドがこのように変わると見るのは早計だ。「コード」は、"Comply or Explain"―説明責任を果たせば遵守を求めない―としたが、社外監査役を取締役にして社外取締役二人以上という原則を満たした会社も少なくない。独立社外取締役の選び方にも課題がある。2003年に委員会等設置会社へ移行した大企業の不適切会計の例に待つまでもなく、形式で企業統治力は計れない。

 不祥事発覚後に名実ともに社外役員重視が図られてきたことからもわかるように、「コード」を活かすも殺すもトップの姿勢次第というのが実感だ。社内の常識は社外では非常識と、企業のトップが聴く耳を持っている会社では、「コード」を契機に、社外役員をより一層活用すべく、環境を整えつつある。しかし外からの意見の必要性を感じていない企業はまだ多いのではないか。

 「コード」の策定が成長戦略かと違和感を覚えたのは、その有効性に加えて、そもそも海外とはリスクへの姿勢に違いがあるとの認識があったからだ。海外ではリスクの取りすぎを抑制すべく企業をモニターすることに重点がある。他方、日本では、リスクへの姿勢が消極的すぎ、適切なリスク負担を促す必要がある。しかし、リスクを伴う投資が取締役会等にでる前に葬られていたら、いくら中長期的な企業価値向上を社外役員が意識していても、企業が適切なリスクを取っているかどうかモニターすることは困難だ。

 加えて、トップの意識が変わっても役職員全体の意識が変わらなければ「変革の時代を切り拓いていく」企業に変われない。会社の理念だけでなく、具体的に、リスク、リターンについての量的・質的な物差しを会社全体で共有できるといいが、簡単ではない。

 「物言う投資家」についても、企業について十分知識がなかったり、流動性の多さを指摘するも短期的な視野で配当増や自社株買いを促すことになるのでは、中長期的に成長率を高める投資に繋がらない。

 企業統治改革を冷ややかに見ている有識者も多い中、企業が主体的に変わるにはどうすればいいのか。経験からいえば、まずは企業トップは少なくとも社外役員とは同じ目線でお互い遠慮なく議論することだ。議論の質を向上させるためには、企業の情報開示に加え、社外役員側も理解を深める努力が必要だ。