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2013.09.06

デジャビュ-「実効ある金融政策」を巡る議論-

  • 須田 美矢子
  • 特別顧問
    須田 美矢子

 小泉政権下の2003年前半の金融政策決定会合議事録が公表された。現在に通じる点も多く、私の発言の一部を再録しておきたい。

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 「実効ある金融政策を期待したい」という政府の声をしばしば見聞きする。「実効ある金融政策」効果は、ポートフォリオ・リバランスを通じて発揮されると想定される。現在、長期国債の利回りは0.8%台まで低下し、ベースマネーとの代替性は高まっている。したがって、「長期国債買い切りオペの増額」よりも、外債、ETFなど、マネーとの代替性が低い金融資産の購入を検討するということになる筈だ。

 どのような資産であれ、金融政策の実効性を高めるには、かなりの量の購入が必要だ。世の中では、「日銀は、デフレ脱却のため、徹底的に長期国債を買い進め、財政政策をサポートすべき」、「インフレ予想の醸成に繋がれば、流動性の罠からも脱却できる」といった主張もなされている。こうした主張は、「国債を消化し、期待形成にうまく働きかけることによって流動性の罠から脱却する可能性を高め、しかも、結果的には実質的な債務削減に貢献する」という「一石三鳥」の妙案のようにも聞こえる。

 しかし、こうした考え方を突き詰めると、「政府債務の削減」を優先し、「物価の安定」を犠牲にするというポリシー・ミックスを選択することを意味しているように思う。これがインフレ予想を高めるとすれば、「この政策を続けていけば、いずれ日銀は物価のコントローラビリティを失う」という連想による可能性が高い。一部の経済学者は、「日銀にはインフレ率を2%程度に抑える能力がある」と簡単に言う。確かに、資金吸収を図ることはできる。その際に実体経済にどのような影響が及ぶかとか日銀が大きな損失を被る可能性があるという重要な問題を脇に置くとしても、国債の円滑な消化は可能なのかという、もう一つの重要な問題に直面せざるを得ない。

 「改革と展望」で示されたケースで、新規財源債の発行見込み額は、15年度36.4兆円から、18年度には42.9兆円まで増大。(18年度想定の)名目成長率が2.5%、消費者物価上昇率が1%となれば、金融政策として、長期国債を大幅に買い続けることは想定できない。その際に、国債を円滑に消化する問題を考えると、国民に受け入れられるマイルドなインフレのもとでの財政再建が非常に困難であることがわかる。実効ある金融政策のあり方を、こうした展望の中で考えていく必要がある。また、最近、関心が集まっている「財政政策との合わせ業」論についても、一つ間違えると、「財政再建を棚上げするべきである」という主張とも重なり合う惧れもある。

 私は、将来の高い経済成長による税収増が見込めない現状では、マイルドなデフレの克服においても、また、財政再建においても、アグレッシブな金融緩和に頼るよりも、規制緩和等構造改革を進めること、政府・日銀が協力し合って、インフレ期待よりも成長期待を高めることが王道であると考えている。
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 10年後にはこのような議論から卒業していることを願うばかりだ。