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2013.10.11

規制委員会に合理的な規制活動を望む

  • 澤 昭裕
  • リサーチ・オーガナイザー
    澤 昭裕

原子力規制委員会の任務とは

 福島第一原発事故以降、原子力の規制と振興を分離する目的で行政組織の見直しが行われ、安全性の確保の仕事が原子力規制委員会に割り振られた。すなわち経済的資産である原子力発電所をどのような安全基準や対策の下に動かしていくかということが、その規制行政機関としての任務となったわけである。ところが、実際に原子力規制委員会が立ち上がってみると、事業者とのコミュニケーションを深めつつ安全の高みを目指すという本来の規制行政を行うというより、事業者は嘘をついているにちがいないという不信感の下で「取締行政」を強力に推し進めているかのような出来事が頻発している。

 原子力規制委員会は安全確保だけが自分たちの任務であり、電力需給や経済的な問題については関知しないとの立場を取ってきている。そういった姿勢は理解できなくもない。しかし、事業者は電力の供給責任という法的義務を満たすべく原発を運転しているのであり、また規制基準の変更があるたびに資金流出を伴う設備投資を行って対応するわけだから、規制委員会は可能な限り体制を整備し、スピード感と合理性を伴った審査を行う努力をすることは行政機関として当然だろう。「安全性はすべてに優先する」ということと、「だからその他の事情は何も考慮しない」ということとは同義ではない。そもそも行政機関である限り、所管法律の施行に当たっては、許認可事業者(ライセンシー)や国民の負担を最小限にとどめることもその任務の一つだという認識がなければならない。原子力規制委員会は「科学的真実がどこにあるのかを探る」学会ではなく、工学的にどのような対策をとれば安全性が許容範囲で確保されるのかを探ることがその任務なのである。


規制プロセスを巡る混乱

 規制プロセスの予測可能性、これが重要だ。予測可能性がなければ、ライセンシーとしては何をどのタイミングでどこまで対応すればよいのか分からず、作業や時間のロスが生じる。

 その例が炉規制法のバックフィット条項に関する基準適合確認プロセスのあいまいさだ。手続きをきちんと政省令に委任していない炉規制法自体の問題でもあるのだが、今回のプロセスは当初田中規制委員長私案(3月19日「原子力発電所の新規制施行に向けた基本的な方針(私案)」)として提示され、現在に至るまで正式に文書化されているわけではない。一般的な行政機関での文書取扱い基準に照らしてみれば、重大な瑕疵があると言えよう。

 このように行政的に極めて不適切な状態は看過できない。内外の一般市民が日本の原子力安全規制がどのような手続きで行われているのか調べようとした場合、それが国民の生命財産に関わる規制であるにもかかわらず、これほど不透明な行政手続きになっているとは思ってもみないだろう。こうした正式な文書化には組織としての意思決定システムが正しく構築されていなければならない。手続きを予測可能化するための炉規制法の改正を含め、早急な対応が必要である。