本文へスキップ

2016年8月29日(月)10:00~16:50 & 30日(火)10:00~15:00開催 場所:キヤノングローバル戦略研究所 会議室3

統数研共同研究集会「経済物理学とその周辺」H28年度第一回研究会

 キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)は2016年8月29日と30日の2日間にわたり、国内の経済物理学研究者を集め、統数研共同研究集会「経済物理学とその周辺」平成28年度第一回研究会を開催しました

プログラム

ProgramPDF:276KB


開会挨拶

  • 福井 俊彦
    キヤノングローバル戦略研究所(CIGS) 理事長

    160829_fukui_photo.jpg.jpg

Session 1 Chair: 佐藤 彰洋(京都大学大学院情報研究科、CIGS)

  • 「求人データメッシュ統計の時空間分析」

    発表者:
    佐藤彰洋(京都大学大学院情報研究科、CIGS研究員)

    共同研究者:
    渡辺務(東京大学大学院経済学研究科、CIGS研究主幹)


      インターネット上の求人広告サイトから収集した求人データを用いることにより、日本国内の求人密度と給与に関する分析を行った。更に、求人広告数に関するメッシュ統計を作成し、このメッシュ統計と政府統計(総務省国勢調査による人口、総務省経済センサスによる事業所数、労働者数)との関係について調べた。分析の結果、1kmメッシュでは求人広告数に対して事業所数と労働者数が説明能力が高く、10kmメッシュでは人口、事業所数、労働者数が同程度の説明能力を有していた。80kmメッシュでは人口が最も説明能力が高い変数となった。更に、賃金および求人業種の多様性について分析を行った。求人業種の多様性と求人数との間には非線形的な相関関係が存在することが分かった。
    160829_sato_photo.jpg
  • 「ヒット現象の数理モデルを用いたポケモンGO流行の解析」

    発表者:
    石井晃(鳥取大学大学院工学研究科)

    共同研究者:
    味戸正徳(鳥取大学大学院工学研究科)
    川畑泰子(鳥取大学大学院情報理工学研究科)


      今年7月22日より日本でもサービスが開始された、スマホの位置情報データを用いたオンラインゲーム「ポケモンGO」の大流行を、それに関連したブログやTwitterの書込数の日毎の変動をヒット現象の数理モデルで解析した。その結果は日本公開前(7月初め〜7月21日)とその後(7月22日〜8月15日)で明らかに関心が違っていて、日本公開後に直接コミュニケーションが大きくなっていた。その反面、間接コミュニケーションはむしろ少なくなっていたのは特定の関心を示す層で大ヒットしている反面、そうでない層の関心は日本公開後に減少していることを示す。ブログと比べてTwitterの書込数が日本公開直後の関心のピークから大きく減少しているが、それは1台のスマホではポケモンGOをやりながらツィートできないからと考えられる。

    発表資料PDF:1.5MB
    160829_ishii_photo.jpg
  • 「ブログ上の形容詞頻度時系列に見られる遅い拡散」

    発表者:
    渡邊隼史(情報システム研究機構 データサイエンス基盤施設 社会データ構造化センター)


      一国規模のブログのキーワードの書き込み数の時間変化の情報は社会全体の関心や感情をとらえるツールとして使用でき、現在では、マーケティング等実社会でも利用されている。本研究では、そのデータの基礎的特性の研究として、日本語ブログ30億記事を用いた、形容詞の1日あたりの書き込み頻度時系列(ブログ時系列)の拡散に関する解析を行った。特に、ゆらぎのスケーリングという観点からデータによる観測とモデル化を行った。その結果、第一に、ブログ時系列には、外的要因など特別な状況がない場合、ランダムウォーク(やべき拡散)より遅い拡散を示すことを示唆した。第二に、その観測結果をみたす時間発展モデルは、分布やスペクトルなど(特別な外的要因がない)ブログ時系列のそのほかの様々な特性を再現できることも示した。本結果は、ブログ時系列のランダムな時間発展の定式化に対応し、それを利用することで、ブログ時系列からランダム的な成分を取り除き、ブログ時系列解析の精度向上に寄与することが期待される。
    160829_watanabe_photo.jpg
  • 「株価の動的相関の推定と変化点検出・ネットワーク分析への応用」

    発表者:
    磯貝孝(首都大学東京大学院経営学専攻、日本銀行金融機構局)


      株価の日次収益率の動的な相関をDCC-GARCHモデルを用いて推定し、相関ネットワークを動的に構築する方法について、その概要を紹介した。モデルベースの動的な相関を用いる場合と一般的に用いられる観測期間を移動させながら相関行列を計算する手法(ムービング・ウィンドウ法)を比較し、提案手法のメリットを整理した。さらに、推定した動的な相関行列を動的な相関ネットワークに変換し、そのネットワーク的な特徴がどのように変化しているかを観測した。具体的には、輸送用機器、銀行の株価の動的な相関ネットワークについて、ネットワーク密度、中心性、異質性のトポロジー指標の時系列変化を観察し、市場混乱時における特徴的な変化を検出した。本発表のより詳細な情報については、以下の論文を参照されたい。
    Isogai, T.: Building a dynamic correlation network for fat-tailed
    financial asset returns. Applied Network Science 1(1), 1-24 (2016)
    http://link.springer.com/article/10.1007/s41109-016-0008-x

    発表資料PDF:552KB
    160829_isogai_photo.jpg

招待講演Ⅰ

  • 「動向情報の言語化とその周辺―金融市場の動向を例にして―」

    発表者:
    小林一郎(お茶の水女子大学)


       本研究では、動向情報の言語化を行うための基盤技術となるテキスト生成手法について、その歴史的な変遷について概観し、講演者がこれまでに進めてきた「金融市場動向の言語化」について、知識・言語学ベース、テンプレートベース、統計的手法ベースのアプローチを説明する。知識・言語学ベースのアプローチにおいては、1980年代にテキスト生成研究において盛んに用いられたシステミック文法を用いて為替変動の時系列データがどのようにその変動を説明するテキストとして生成されるかについて説明する。また、テンプレートベースのアプローチを用いて、株価動向の一日の概要を説明するテキストの自動生成システムを紹介する。さらに、統計的アプローチにおいて、株価の時系列データを圧縮しパターンを抽出したものに対して、そのデータを説明する文から生成した言語モデル(バイグラム)モデルを対応させ、バイグラムモデルから動的計画法を用い、適切な単語の組合せを求めることからテキストを生成する手法を紹介する。さらに、新しい時系列データが与えられた際に、時系列データどうしの類似度に合わせて、新たな言語モデルを生成し、それに基づきテキストを生成する手法を紹介する


    160829_kobayashi_photo.jpg

Session 2 Chair: 大西 立顕(東京大学大学院情報理工学系研究科、CIGS)

  • 「都市の人口と施設数を関係づけるスケーリング則」

    発表者:
    大西立顕(東京大学大学院情報理工学系研究科、CIGS主任研究員)

    共同研究者:
    水野貴之(国立情報学研究所、CIGS主任研究員)
    渡辺努(東京大学大学院経済学研究科、CIGS研究主幹)


      都道府県単位のマクロな空間スケールで観測すると、都市の様々な統計量は人口のベキ乗に比例し、人口が2倍になるとアウトカム(富、特許、犯罪など)は2倍以上に増加するが、公共インフラ(道路,病院など)の増加は2倍以下になるという都市のスケーリング則が知られている。人口や産業の集積は、富の増加や効率性向上といった正のフィードバック効果と犯罪増加、地価上昇、渋滞悪化といった負のフィードバック効果をもたらしている。全国版・業種情報付き電話帳データには全国のあらゆる店舗・施設(事業所、病院、学校、公園など)の地理空間情報(住所や業種)が収録されており、数ヶ月毎に情報が更新されるため、高精度かつ高頻度な時空間ビッグデータになる。この電話帳データを活用して業種別にスケーリング指数を解析し、都市の特徴づけを行った。
    160829_onishi_photo.jpg
  • 「外国為替レート間の相関とエントロピー」

    発表者:
    石崎龍二(福岡県立大学人間社会学部)

    共同研究者:
    井上政義(鹿児島大学名誉教授)


      外国為替レートの変動は、平均や標準偏差で特徴づけることができない非定常性を有している。そこで、パターン・エントロピーにより、外国為替レート時系列の時間的に局所的な変動の複雑さ、複数の外国為替レートの時系列から、大域的で時間的に局所的な変動の複雑さの定量化を行った。複数の外国為替レートの分析では、主要国際決済通貨の7種類のペア通貨の外国為替レートのデータを対象とした。複数の外国為替レートのパターン・エントロピーが、乱数時系列のパターン・エントロピーに比べて、高い値を示す期間と低い値を示す期間に着目して、外国為替レート間の相関を考察した。相関係数に加えて相互情報量を用いて分析を行った。パターン・エントロピーが高い値を示す期間では、外国為替レート間の相関が高くなる傾向があることを示した。
  • 「The WAM model revisited」

    発表者:
    黒田正明(明治学院大学教養教育センター附属研究所)


      生体に対する放射線人工照射の影響に関する数理モデルの一つに、2‐3年前から坂東グループが提案しているWAM モデルがある。このモデルは、斉次線形な連立微分方程式で表されるので、人工照射の線量率が一定の場合は、簡単に厳密解が求められる。厳密解に基づくと、(1)放射線の人工照射前に今着目している生体組織の細胞群が定常状態にあるなら、人工照射によって損傷を受けた細胞群の修復は起こらない。(2)定常状態にある組織に放射線を人工照射すると、その効果は総線量にのみ依存し、線量率にはよらない、ことがわかる。さらに、人工照射前に組織が定常状態でない場合は、(3)人工照射の影響は線量率及び総線量の双方に依存する。(4)組織が適当な条件をみたすなら、人工照射によって損傷した細胞群が修復される可能性があることを示した。定常状態にない組織に対する放射線照射の影響を見るときは、変異細胞の個数変化のみならず、正常細胞の個数変化にも注意を払う必要がある。厳密解から得られるこれらの結論は、近似解に基づいて分析した坂東グループの結果とは異なる部分がある。近似解を使った分析の問題点を指摘し、正しい結果が得られない原因にも言及した。
    160829_kuroda_photo.jpg
  • 「時価総額のべき乗法則 - ITバブルと上海バブルのケース -」

    発表者:
    水野貴之(国立情報学研究所、CIGS主任研究員)


      NASDAQと上海株式市場の上場銘柄の時価総額はべき分布に従っている。これらの分布のべき指数は1の周辺で変動し、1997-2000年のITバブルと2007年の上海バブルの期間に大きく下落した。観測されたべき指数の下落は、株のファンダメンタルズと市場価格との乖離に関係がある。我々は、ファンダメンタルズの変動に本質的に寄与している財務項目を調べるために、1990-2015までの各年の時価総額を売上や利益、資産などの財務項目で回帰した。NASDAQの銘柄での回帰の結果は、企業のファンダメンタルズは純資産によって補足できることを示している。すなわち、PBR (price book-value ratio)はファンダメンタルズからの乖離を測るよい物差しである。NASDAQにおけるPBRの分布は、ITバブル期に大きな裾野を持つ。これは、PBR分布の裾野を構成する極一部の銘柄で極端にファンダメンタルズからの乖離が生じていたことを示している。一方で、上海株式市場の企業のファンダメンタルズは純資産だけでは補足できない。このファンダメンタルズの捕捉は今後の課題である。
    160829_mizuno_photo.jpg
  • 「耐巨大性を備えた表データ分析用のコマンド群の提案」

    発表者:
    下野寿之(株式会社ウフル)


      昨今、大規模なデータの分析の需要はあるが、十分なソフトウェアがあるとは言いがたいと本発表者は考えている。それは、大きなサイズのファイルもしくはファイルの個数の多いデータがある場合、 Unix、Linux、R、Pandas、Excel、SQL、Hadoop 等のソフトウェアを駆使しても、まだ足りないという意味である。分析の目的で企業の基幹システムからデータを取得した際に、迅速に解読、把握し、さらにいわゆる前処理の操作を容易化する必要性は現状とても高いと考えられる。そのため、それに適した一体化した機能群を備えたソフトウェアが必要と考え、本発表者はその様なソフトウェアの開発を続けている。既にある程度完成しており、各種機能が提供可能である。それぞれの機能は、学術研究において大規模なデータを操作する者にとっても必須のものとなりうる。このソフトウェアについて紹介する。

    発表資料PDF:2.8MB
    160829_shimono_photo.jpg
  • 「経済社会データおよび環境データを用いた空間評価指標の大規模計算~地域メッシュ統計の利活用~」

    発表者:
    佐藤彰洋(京都大学大学院情報研究科、CIGS研究員)

    共同研究者:
    澤井秀文(NICT)
    榎峠弘樹(Triton Re)
    Tae-Seok Jang(Kyungpook National University)


       日本国内約38万か所の3次メッシュ(JIS X0410)について、一般化パレート分布を用いた津波ハザードの推計と政府統計に基づく危険にさらされる経済的価値との間の関係を調べ、最悪シナリオにおける津波リスクの推計を行った。
    詳細については、https://www.hpci-office.jp/conference/201510/hp140076.pdfを参照のこと。

    発表資料PDF:2.0MB
    160829_sato2_photo.jpg

Session 3 Chair:水野 貴之(国立情報学研究所、CIGS)

  • 「観光地を狙った事件前後での移動ネットワークと土地生産性の変化」

    発表者:
    水野貴之(国立情報学研究所、CIGS主任研究員)

    共同研究者:
    大西立顕(東京大学大学院情報理工学系研究科、CIGS主任研究員)
    渡辺努(東京大学大学院経済学研究科、CIGS研究主幹)


      Twitterユーザーの位置情報が記録された1億5000万ツイートとユーザーの睡眠を記録する活動量計の統計値を利用して、ユーザーの属性別の人口推計が可能であることを示した。また,観光地で起きた事件の前後での、生活空間の変化、単位時間当たりの移動量の変化について報告した。

    160829_mizuno_photo.jpg
  • 「マートン・モデルとネットワーク」

    発表者:
    久門正人(Fintech Lab)

    共同研究者:
    金子拓也(国際基督教大学経営学部)


    発表資料PDF:3.7MB
    160829_hisakado_photo.jpg
  • 「連続する2年にて1年目にしかデータが存在しない企業の性質」

    発表者:
    石川温(金沢学院大学経営情報学部)

    共同研究者:
    藤本祥二(金沢学院大学経営情報学部)
    水野貴之(国立情報学研究所、CIGS主任研究員)
    渡辺努(東京大学大学院経済学研究科、CIGS研究主幹)


      企業のある年の売上、従業員数、正利益などの企業規模量が大規模域でベキ則、中規模域で対数正規分布に従うことは良く知られている。また、これらのデータが連続する2年ともに存在する場合、その同時分布に反対称性や準反対称性が、その成長率分布にジブラ則や非ジブラ則が観測され、それらを組み合わせることでベキ分布や対数正規分布が導かれることも示されている。しかし、連続する2年の最初の年にデータが存在して、次の年にデータが存在しない企業に関する性質はほとんど知られていない。我々は、そのようなデータを退出データと名付け、売上データの退出率は売上のベキに従って減少することを日本・フランス・イタリア・スペインで観測した。また、退出データを反対称性や非ジブラ則に欠損しているデータと見なすと、退出率の性質を定性的に説明できることを示した。また、ある程度、定量的にも整合性のある説明になっていることも示した。

    発表資料PDF:505KB
    160829_ishikawa_photo.jpg
  • 「景気・為替・物価変動の連関ダイナミクス」

    発表者:
    吉川悠一(新潟大学理学部)

    共同研究者:
    家富洋(新潟大学理学部)

    160829_yoshikawa_photo.jpg

招待講演Ⅱ

  • 「ブロックチェインの構造特性―社会経済システムへの応用と課題」

    発表者:
    岡田仁志(国立情報学研究所)


      分散型仮想通貨の基礎となるブロックチェインは、いわゆるFinTechの一翼を成す技術として、金融システムをはじめとした産業界への応用が検討されている。しかしながら、ブロックチェインの分類と定義については諸説あり、標準化の必要性についても意見が分かれている。本講演では、ブロックチェインの構造特性について、いくつかの典型的な分類を比較しながら議論の状況を概観する。そして、ブロックチェイン技術は国家・社会・経済にどのような影響を及ぼすのか、その可能性と課題について考察する。


    160829_okada_photo.jpg

招待講演Ⅲ

  • 「アローヘッド市場における株価変動の統計分布」

    発表者:
    田中美栄子(統計数理研究所)


      東証において、アローヘッドシステムという1ミリ秒間隔で株式売買を行える仕組みが稼働を始めたのが2010年1月であり、2015年9月にはその第2ステップとして0.5ミリ秒間隔にまで短縮された。この高速取引によって価格変動の性質がどのように変化したのかを見るため、5秒足にサンプリングされた2013年のデータから分布関数を求めたところ、分布の両端を除く中心部分の分布に対し、1990年頃の米国株価変動の解析結果により求められたα=1.4のLévy安定分布と同じであるという結果を得た。更に1分足にサンプリングされた2015年のデータからも同じ結果を得た。事象の大半を占める、分布の中心部分に於いて安定分布を確認できたことにより、1分以下の時間間隔における価格変動をiidで統一的に記述する裏付けが本データ解析により得られた。このような研究の動機や経緯を、総研大「新分野の開拓」から統数研研究会「経済物理学とその周辺」の歴史に絡めて解説を試みたい。

    発表資料PDF:4.7MB
    160829_tanaka_photo.jpg

閉会挨拶

  • 佐藤彰洋
    (京都大学大学院情報研究科、CIGS研究員)

    160829_sato3_photo.jpg