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2016年5月30日(月)9:00~17:00 & 31日(火)9:00~13:00開催 場所:キヤノングローバル戦略研究所 会議室3

CIGS Conference on Macroeconomic Theory and Policy 2016

 キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)は2016年5月30日および31日に、国内外の著名なマクロ経済研究者および日本人若手研究者を集め、”New Directions in Macroeconomics”と題した”CIGS Conference on Macroeconomic Theory and Policy 2016”を開催しました。

  • アジェンダ
    AgendaPDF:178KB

  • 発表資料および論文


    Opening Remarks

    • Toshihiko Fukui
      President, The Canon Institute for Global Studies

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    Presentation

    • 発表者: Martin Schneider (Stanford University)
      "Uncertainty Aversion and Heterogeneous Beliefs in Linear Models"
      (with Cosmin Ilut and Pavel Krivenko)



      異なる将来予想を持つ人々が相互作用するマクロ経済システムのモデル。このモデルでは、将来の事象について「ナイトの不確実性」(事象についての確率分布そのものが不確実であること)が存在すると仮定されている。人々は、ナイトの不確実性を回避するため、「最悪の事態」を想定して行動する。このモデルでは、人々は異質な将来予想を持つため、それぞれ異なった「最悪の事態」を想定して行動する。予備的貯蓄、資産価格のプレミアムなどについて新しい説明をするモデルである。

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    • 発表者: Hikaru Saijo (University of California, Santa Cruz)
      "Learning, Confidence, and Business Cycles" (with Cosmin Ilut)



      「ナイトの不確実性」(事象についての確率分布そのものが不確実であること)に直面する企業による景気循環モデル。企業は、生産活動を通じて、徐々に確率分布を学習していく。不況期には、投資や生産が少ないので、不確実性についての企業の学習が進まず、不確実性が高い状態が続く。不確実性が高いと、企業の生産や投資も低迷を続ける。このフィードバックループによって、不況が増幅され、長期化する。需要ショックによる景気変動の特徴を、かなり説明することができる。このモデルが正しければ、価格の硬直性や労働の硬直性よりも、不確実性が景気変動の原因だということになるので、政策的な含意が大きく変わる可能性がある。

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    • 発表者: Yongseok Shin (Washington University in St. Louis)
      "Managing a Polarized Structural Change" (with Sang Yoon (Tim) Lee)



      水平的二極化(労働者同士の間での二極化)と垂直的二極化(労働者と管理者との間での二極化)を説明する理論モデル。ミドルスキル(中程度の技能)の労働者をより多く使う産業では、水平的二極化と垂直的二極化が両方とも速いスピードで進むことが示される。さらに、ミドルスキルの労働者を多く使う産業は縮小し、そうでない産業が成長する。究極的に、産業構造が変化し、ミドルスキルの仕事は消滅していくと予想される。

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    • 発表者: Tomoyuki Nakajima (Kyoto University)
      "A Theory of nonperforming loans and debt restructuring" (with Keiichiro Kobayashi)



      不良債権が蓄積すると、銀行は借り手の返済計画にコミットすることができなくなる(借り手が返済計画どおりに返済しても、銀行はそれ以上の返済を求める可能性を排除できないから)。その結果、借り手の企業はやる気を失い、生産活動が低迷する。不良債権を削減すれば「銀行が返済計画にコミットできない」という非効率は発生しない。しかし、複数の銀行が1つの企業に貸出をしている場合、銀行同士の交渉が長引いて、不良債権を削減する意思決定が非常に遅れることがある。

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    • 発表者: Mikhail Golosov (Princeton University)
      "Fiscal Policy and Debt Management with Incomplete Markets"
      (with Anmol Bhandari, David Evans, Thomas J.Sargent)



      不完備市場の経済で、政府が行う課税と債務発行と資産管理を分析するモデル。二次式で近似することにより、政府のポートフォリオ選択を陽表的に記述することができる。政府の最適行動は、一種の財政的リスクを最小化することだと示される。アメリカ経済に当てはめると、最適な債務レベルはゼロに近いマイナスとなる(無借金か若干の黒字が最適)。

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    • 発表者: Hitoshi Tsujiyama (Goethe University Frankfurt)
      "Optimal Income Taxation: Mirrlees Meets Ramsey" (with Jonathan Heathcote)



      Mirrlees型の最適課税政策(政府は私的情報を知り得ないとの仮定のもとで、もっとも効率的な税制)とRamsey型の最適課税政策(税を所得の関数とし、一定の関数形を仮定したうえで、もっとも効率的な税制)を比較する。この論文では様々なクラスの社会厚生関数を分析する(その中のひとつは、現在の再配分政策に対する選好を含んだ社会厚生関数である)。最適な税率は、所得が上がるにつれて一般的に上昇することが示された(最適税率はフラットでも、U字型でもない)。このパターンは現在のアメリカの税制と同様である。

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    • 発表者: Martin Eichenbaum (Northwestern University)
      "Does the New Keynesian Model Have a Uniqueness Problem?"
      (with Lawrence J. Christiano, Benjamin K. Johannsen)



      ニューケインジアンモデルは、線形近似すると均衡が複数になる欠点を持っている(ゼロ金利になる均衡とゼロ金利にならない均衡が発生する)。どちらの均衡に行くかによって、政策的な含意も変わってくる。この論文では、「学習に対して安定な」均衡という概念を作り、学習に対して安定な均衡は、ゼロ金利制約があっても唯一に決まることを示す。この均衡の性質は、通常のニューケインジアンモデルの均衡と性質はほぼ同じになることが示された。したがって通常のニューケインジアンモデルを分析することで、ゼロ金利近傍での財政乗数や政策的含意を見誤ることはないだろう、と考えられる。

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    • 発表者: Monika Piazessi (Stanford University)
      "Payments, Credit and Asset Prices" (with Martin Schneider)



      この論文では、2層の取引がある貨幣経済モデルを考察する。第1層は、家計と投資家が財と証券の取引を行うが、その支払い手段は銀行が提供する決済機能である。第2層の取引は、銀行同士(インターバンク)の決済取引であり、その支払い手段は、準備またはインターバンクの信用である。このモデルでは、インターバンクの信用を生産するために実物的な資源を必要とすると仮定している。このことから、資産の収益性についての期待が物価水準に影響し、金融政策が資産価格に影響するという結果が導き出される。

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    • 発表者: Fumio Hayashi (The National Graduate Institute for Policy Studies)
      "Affine Term Structure Pricing with Bonds Supply As Factors"



      政府債務の満期構成が、イールドカーブに与える影響を分析するモデル。このATSM(Affine Term Structure Model)では、短期金利に加え、それぞれの満期ごとの政府債務の供給量が、イールドカーブに影響する。政府債務の供給ショックの影響は、すぐには大きくならず、その供給ショックを受けた国債の満期の時点で最大になる。このコブ状の反応は、特殊な投資家の存在を仮定しなくても発生する。

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    • 発表者: Ricardo Lagos (New York University)
      "Turnover Liquidity and the Transmission of Monetary Policy" (with Shengxing Zhang)



      金融政策が、流動性をベースとしたトランスミッションメカニズムで資産市場に影響を及ぼすことについて、実証的なエビデンスを示す。また、このメカニズムの理論モデルを作り、実際にこの理論がデータとマッチするかどうかを評価する。

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    • 発表者: Shouyong Shi (Pennsylvania State University)
      "Endogenously Procyclical Liquidity, Capital Reallocation, and q" (with Melanie Cao)



      資本ストックの企業間再配分は好況期に増え不況期に減るのに対し、企業間のTobinのqのバラツキは景気の時期によらない(または好況期に減り不況期に増える)。この事実を説明するために、内生的な流動性モデルを作る。資本の再配分市場はサーチとマッチングの摩擦がある市場であると仮定する。サーチ市場の逼迫度合いが「流動性」を示す。サーチ市場に参加するかどうかは買い手が決めるから、逼迫度合い(流動性)は内生的に決まる。また、資本の新設も内生的に決まる(一定コストを支払うかどうかを資本生産者が決める)。このとき、生産性が上昇する時期(好況期)には、資本の新設が増え、買い手の参入が増えるので流動性が増え、結果として再配分される資本が増える。一方、資本価格が上昇するので、Tobin の q が小さい企業ではそれが大きくなり、Tobin の q が大きい企業ではそれが小さくなる(バラツキが小さくなる)。

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    Closing Remarks

    • Selahattin Imrohoroglu (USC Marshall School of Business)

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