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2015年5月25日(月)9:00~17:15 & 26日(火)9:00~13:35開催 場所:キヤノングローバル戦略研究所 会議室3

CIGS Conference on Macroeconomic Theory and Policy 2015

 キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)は2015年5月25日および26日に、国内外の著名なマクロ経済研究者および日本人若手研究者を集め、”Growth and Fluctuations with Heterogeneous Firms and Households”と題した”CIGS Conference on Macroeconomic Theory and Policy 2015”を開催しました。

  • アジェンダ
    AgendaPDF:179KB

  • 発表資料及び論文


    Opening Remarks

    • Toshihiko Fukui
      President, The Canon Institute for Global Studies

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    Presentation

    • 発表者:Richard Rogerson (Princeton University)
      "Skill-Biased Structural Change" (with Francisco J. Buera and Joseph P. Kaboski)



      先進国のデータから、1人あたりGDPの増加は、高スキルの産業に付加価値の重心が移るという構造変化と連動していることが示される。先進国のさらなる成長は、高スキルの労働力に対する相対的労働需要に増加させる。このようなスキルバイアスのある構造変化がスキルプレミアム(高スキル労働者の賃金の低スキル労働者の賃金に対するプレミアム)の上昇を説明できるかどうかを、2セクターモデルを作って検証した。近年のアメリカ等でのスキルプレミアム上昇のうち、25-30%が構造変化によって説明できることが分かった。

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    • 発表者:Shuhei Takahashi (Kyoto University)
      "Time-Varying Wage Risk, Incomplete Markets, and Business Cycles"



      個別的な所得リスクは景気循環に連動する。このリスクがもたらす影響を分析するため、不完全資産市場モデルを使って、消費・貯蓄選択と雇用選択をする消費者の行動を分析する。消費者は時間変化する個別的な賃金リスクを負っているとする。モデルでは、個別的な賃金リスクと集計的な生産性(TFP)のリスクがあるときには、総労働時間と平均労働生産性の間には弱い負の相関が発生した。これはアメリカのデータと整合的である。一方、賃金リスクの変動がない場合には、モデルは強い正の相関を発生させたが、これはデータとは反対の動きである。

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    • 発表者: Christopher Tonetti (Stanford Graduate School of Business)
      "Long-Term Care Insurance, Annuities, and the Under-Insurance Puzzle" (with John Ameriks, Joseph Briggs, Andrew Caplin and Matthew D. Shapiro)



      介護ケアにコストがかかるため、人生の高齢期に予備的貯蓄を行う動機が強まっている。このことは、長期介護保険(LTCI)に対する需要が増えていることを示唆しているが、現実にはLTCIの保有は低い。この論文では市場で販売されているLTCIの欠陥を解決するようなLTCIに対する需要を測定する2つの方法を分析する。一つ目は、構造的ライフサイクルモデルを使って、需要を個人特殊的な効用と状態変数の関数として表す。二つ目は、サーベイに基づいて購入希望の強さを測定する。どちらの手法でも、需要は現実のLTCI保有よりも大きくなる。モデルとサーベイで回答された需要の差は大きく、世代間の所得移転に関連した要因が隠れていたと思われる。年金需要についても同じようなパターンが成り立つ。

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    • 発表者:Ariel Zetlin-Jones (Carnegie Mellon University)
      "Screening and Adverse Selection in Frictional Markets" (with Benjamin Lester, Ali Shourideh and Venky Venkateswaran)



      情報の非対称性があるためにアドバースセレクションが起きる産業(生命保険など)では、売買者のタイプが明らかになるスクリーニング均衡とタイプが不明のままのプーリング均衡が発生するが、これまでの論文では、市場構造として、完全競争または独占という両極端を仮定している。この論文では市場の競争の度合い(π)を導入し、πの値が0 < π < 1のときにどのような均衡になるか分析する(π=1が完全競争、π=0が独占)。スクリーニング均衡になるかプーリング均衡になるかは、タイプの分布状況によって違うが、さらに、市場が競争的ならスクリーニング均衡になりやすく、市場が独占的ならプーリング均衡になりやすい。アドバースセレクションが激しい経済では、効用レベルが最大になるπは0でも1でもなく、中間的な値になる。アドバースセレクションがマイルドな経済では競争の度合いが上がると効用のレベルが悪化するという、常識と反対の結果が得られる。

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    • 発表者:Huiyu Li (Stanford University and the Federal Reserve Bank of San Francisco)
      "Leverage and Productivity"



      企業が利潤に見合った借入を増やせないとき、集計的な生産性は低下する。この論文では日本のデータを使って、金融制約と生産性のこの関係を定量的に分析する。データは、若く未上場の企業のパネルデータである。データからは、企業のレバレッジと生産/資本比率は生産性と正の相関を持つことが示された(一つの企業における時間変化でも、また、同じコホートの企業間でも同様の傾向が見られた)。データから得られた結果を説明できる標準的な一般均衡モデル(企業が利潤と資本を担保にして借入を行うモデル)を推計したところ、モデルが上記の2つの事実にもっともマッチするのは、一年後の利潤の半分と資産の1/5を担保にする場合であることが分かった。資産のみが担保になる通常のモデルに比べて、このモデルでは、金融制約による生産性のロスが1/3小さいことが分かった。

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    • 発表者:Vincenzo Quadrini (University of Southern California and CEPR)
      "Bank Liabilities Channel"



      金融仲介部門が実体経済に影響を及ぼす経路は、資金余剰主体から資金不足主体に資金を融通する経路(貸出チャネル)だけではなく、金融機関が債務を発行することによって、経済の他の部門の主体がリスク分散の目的で保有するための金融資産を生成するという機能がある。金融仲介セクターの債務が減少するか債務の価値が下がると、リスク分散がしにくくなるので、それを保有している経済主体はリスクの高い活動をやろうとしなくなる(銀行債務チャネル)。リスクの高い活動が経済全体にとっては成長促進的な場合は、銀行債務の低下は経済全体に悪影響を及ぼすことになる。本論文では、自己実現的期待によって発生する金融危機が、銀行債務チャネルを通じてどのように実体経済に波及するかを分析する。

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    • 発表者:Ezra Oberfield (Princeton University)
      "The Global Diffusion of Ideas" (with Francisco J. Buera)



      本論文では、貿易と対外直接投資(FDI)がイノベーションと技術伝播に与える影響を記述するモデルを作る。イノベーションと技術伝播は、新しいアイデアが他の産業や国からの見識(insight)と組み合わさることで進む。ある条件の下では、ある国の知識の総量は、貿易とFDIのその国のシェアと貿易相手国の知識量にのみ依存する。このモデルを使って、貿易から得られる動学的な利得を短期、長期において定量的に分析する。またこのモデルで戦後の韓国の経済成長を分析する。モデルからは、韓国のTFPの成長は、経済が開放的になり、貿易とFDIが大きくなったことで相当部分が説明できると分かった。また、すでにキャッチアップした先進国のTFPについては、貿易やFDIの効果は小さい。

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    • 発表者: Daisuke Ikeda (Bank of Japan)
      "The Effects of Barriers to Technology Adoption on the Japanese Prewar and Postwar Economic Growth" (with Yasuko Morita)



      明治維新による近代化が始まった後も、日本の1人あたりGDPは先進国の1/3のレベルで停滞していた。戦後の高度成長が始まって初めて1人あたりGDPは先進国にキャッチアップした。この戦前の停滞と戦後の高度成長を説明するため、戦前には技術導入に対する障壁があったという仮説を提案し、その仮説を入れた動学的モデルを作成する。投資財の相対価格データから推計した障壁によって、戦前日本と英国との間にあった1人あたりGDPギャップの1/4が説明できる。戦後に障壁が除去されたと仮定すると、投資財価格の変動やGDPのキャッチアップの1/4が説明できることが分かった。歴史的な考察から、この障壁は、政府の国産重視の姿勢、金融制約、外為規制などの制度、競争環境、世界の政治経済的安定性などが関連していたと考えられる。

      • 発表資料PDF:544KB
      • 論文は後日(7月)に掲載します。
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    • 発表者:David Lagakos (University of California, San Diego and NBER)
      "Measuring and Explaining International Differences in Hours Worked" (with Alexander Bick and Nicola Fuchs-Schuendeln)



      1人あたり所得と平均労働時間の関係を調べるため、すべての所得水準の国々を網羅した国際的なデータセットを構築した。データから分かったことは、大人1人あたりの平均労働時間は、低所得国の方が、高所得国よりも、顕著に高いということである。この違いは、雇用率という外延(extensive margin)の違いと雇用者の労働時間という内延(intensive margin)の違いの両面から生まれている。雇用率は、1人あたり所得の減少関数かつ凸関数になっている。また、雇用者の労働時間は(1人あたり所得に対して)緩やかなコブ状の形をしている。この違いは、生存レベルの消費の必要性が入った効用関数と労働供給コストの個別的な違いによって定量的に説明される。このモデルと実証的な発見からいえることは、実際の各国の社会厚生の違いは、所得水準の違いが示唆するよりも、ずっと大きいということである。

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    • 発表者:Nobuhiro Kiyotaki (Princeton University)
      "Wholesale Banking and Bank Runs in Macroeconomic Modeling of Financial Crises" (with Mark Gertler and Andrea Prestipino)



      自らは預金をとらず銀行から資金調達する金融機関をホールセールバンク(またはシャドーバンク)と呼ぶ。貸出を管理する能力の度合いとコミットメント能力の度合いに違いがあると、ホールセールバンクとリテールバンク(家計から預金をとる銀行)が共存することが示される。ホールセールバンクのコミットメント能力が上がると生産量が増え、資産価格が上昇、金利が低下する。銀行取り付けはサンスポット均衡として記述される。銀行取り付けが起きると、生産量、資産価格が急落する(ファストラン)。また。銀行取り付けの予想が生まれるだけで、生産や資産価格が下落する(スローラン)。スローランの後にファストランが起きるという均衡経路は、現実の金融危機の経過と同じである。

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    Closing Remarks

    • R. Anton Braun (Federal Reserve Bank of Atlanta)

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