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2014年5月26日(月)9:00~17:50 & 27日(火)9:00~13:35開催 場所:キヤノングローバル戦略研究所 会議室3

CIGS Conference on Macroeconomic Theory and Policy 2014

2014年5月に国内外の著名なマクロ経済研究者および日本の若手研究者を集め、“Recent Development in Macroeconomics” と題し、"CIGS Conference on Macroeconomic Theory and Policy 2014" を開催しました。

  • アジェンダ
    AgendaPDF:255KB

  • 発表資料及び論文


    Opening Remarks

    • Toshihiko Fukui
      President, The Canon Institute for Global Studies

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    Presentation

    • 発表者:Nobuhiro Kiyotaki (Princeton University)
      "Banking, Liquidity and Bank Runs in an Infinite Horizon Economy" (with Mark Gertler)



      銀行取り付けが発生するマクロ経済モデルを構築する。銀行の持つ資産の価格が高いとき(正常なとき)は、預金者全員が預金引き出しをしても、銀行は資産を売って預金者に払い戻しできるので、銀行取り付けは起きない。しかし、銀行の持つ資産の価格が低いとき(異常なとき)は、銀行は資産を売却しても預金者全員に払い戻しできない。このときは、預金者が殺到する銀行取り付けが起こり得る。銀行取り付けが起きると、資産価格が下落し、生産が落ち込む。また、銀行取り付けの発生確率が高まるだけで、現実には銀行取り付けが起きなくても、銀行の資産は減り、経済活動が悪化する。

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    • 発表者:Ryo Jinnai (Texas A&M University)
      "Liquidity, Trends, and the Great Recession" (with Pablo A. Guerron-Quintana)



      米国経済は、2008-2009年の大不況後に経済成長率は回復したが、GDPの水準は下にシフトした。経済成長は、大不況前の成長トレンドに戻らずGDPの水準は一定の幅で低下した。このような長期的なGDPの低下を説明するために、 Romer (1990)型の内生的成長モデルに Kiyotaki and Moore (2012) 型の流動性制約を入れる。研究開発投資が流動性制約で制限されているというこの理論から、大不況後の長期停滞は次のように説明できる。大きな流動性ショックが発生すると、研究開発投資が減少し、結果的に全要素生産性(TFP)のレベルが低下する。その後、流動性ショックが消えても、TFPのレベルの低下の影響は長期的に残る。2008年秋に大きな流動性ショックと生産性ショックが集中して起きたとすると、このモデルで現実の推移が説明できる。

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    • 発表者:Giuseppe Moscarini (Yale University)
      "Did the Job Ladder Fail After the Great Recession?" (with Fabien Postel-Vinay)



      2008年秋からの大不況についてJob Ladder モデルで考察し、米国の労働統計JOLTS(Job Opening and Labor Turnover Survey)を使って検証する。生産性の高い大企業は生産性の低い中堅企業から労働者を引き抜き、中堅企業はさらに生産性の低い中小企業から労働者を引き抜く、というように、雇用の移動は「梯子を登る」形態になる、とモデル化する。大不況のときには、信用制約で、大量に解雇が行われた。信用収縮の影響が非常に大きいため、その後、大企業の雇用意欲が回復せず、中小企業や中堅企業から大企業への雇用の移動は停滞している。中小企業は失業者プールから労働者を新規雇用するが、そのペースは通常の不況期と同じである。大不況の特徴は、Job Ladder が壊れたことだと言える。

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    • 発表者:Masao Ogaki (Keio University)
      "A Reformulation of Normative Economics for Models with Endogenous Preferences" (with Vipul Bhatt and Yuichi Yaguchi)



      功利主義的な基準ではなく、道徳的な基準により、経済厚生を判断する経済理論を構想する。幼少期の「しつけ」によって個人の選好が変化する「内生的選好」のモデルを考えると、単に効用の和で社会厚生を定義するのは適切ではない。幼少期に甘やかされると忍耐力のない大人になり、幼少期に甘やかされないと、忍耐力のある大人になる、という状況を考える。このとき、政府が相続税を減税すると、親は将来子供に遺産を渡すインセンティブが増すので、貯蓄を増やし、幼少期の子供に与えるモノが減り、子供の忍耐力を涵養することができる。こうすると社会厚生が増加する。このように、政府の政策が「道徳」に基づいて行われると、社会状態が改善する場合があることが示される。

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    • 発表者:Michael Elsby (University of Edinburgh)
      "Understanding Employment Persistence"



      雇用の粘着的な変化についてのミクロ経済学的基礎に関して、二つの指摘をする。第一に、標準的な雇用調整費用のモデルは、アメリカの雇用・賃金の四半期センサスのミクロデータと整合的でないこと。第二に、データから「労働者の補充雇用(replacement hiring)」が雇用のダイナミクスで重要だと示唆された。労働者の引き抜きが、連鎖的に雇用変動を引き起こし、経済全体で雇用変動が増幅されるモデルが考えられる。

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    • 発表者:David Berger (Northwestern University)
      "Volatility and Pass-through" (with Joe Vavra)



      為替レートのパススルー(為替レートの変化が物価の変化に影響する度合い)がミクロな価格変化の構造に影響されることが示された。非公開の個別価格の統計データを使い、個別価格の変動が為替レートのパススルーに影響することが示された。個別価格の変動の影響を無視すると、為替レートのパススルーの予想に大きなバイアスがかかる(1990年代では50%の過大評価になり、2008年の大不況のときには200%の過小評価になる)。パススルーに影響するのは個別の商品価格の、コストに対する反応性であり、この反応性が変化するとパススルーも変わる。不況期にパススルーが大きくなることは、個別価格の反応性の変化に原因があり、不確実性の上昇などが原因ではない、と示唆される。

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    • 発表者:Timothy J. Kehoe (University of Minnesota)
      "Costly Reforms and Self-fulfilling Crises" (with Juan Carlos Conesa)



      ユーロ圏の債務国(PIIGS、ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)では、財政改革や構造改革が遅れている(94-95年の危機後のメキシコに比べて)。筆者らの仮説は、「選挙で政権を失うことを恐れて、現政権は必要な改革に着手できない」ということ。この論文ではメキシコとスペインの比較を行う。政府債務はスペインでは増加し、メキシコでは減少した。経常収支の黒字化にスペインでは4年を要したが、メキシコでは1年未満だった。スペインでは価格調整は小さかったがメキシコでは大きかった。スペインでは不況が長期化し、一方、メキシコでは急速に調整が進んだ。議会民主制の国では経済改革と構造調整はリスキーな政策だと言える。

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    • 発表者:Yongsung Chang (University of Rochester)
      "How Sticky Wages in Existing Workers Can Affect Hiring" (with Mark Bils and Sun-Bin Kim)



      賃金はT期間、固定されるが、労働の強度(effort)は毎期、労働者と企業が交渉して決めるモデルを考察する。不況期には、企業はすでに雇用されている労働者に対して(賃金が固定されているので)労働の強度を強めることを求める。その結果、新規採用を減らし、既存の労働者が過重労働することになる。 また、同じ職場の労働者は同じ強度の労働で働く必要があるときは、不況になっても、新規採用の賃金は低下せず、新規採用の数が減少する(新規採用者も既存労働者もともに労働の強度を強めることが求められる)。

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    • 発表者:Yuichiro Waki (University of Queensland)
      "The Optimal Degree of Discretion in Monetary Policy in a New Keynesian Model with Private Information" (with Richard Dennis and Ippei Fujiwara)



      金融政策はルールに従うべきか、裁量的であるべきか、という問題を考察する。市場参加者には観察できないが中央銀行だけが観察できる「私的情報」が存在するとき、金融政策は次のようなトレードオフに直面する。インフレ期待に依存するフィリップスカーブの下では、時間的にリスクを分散することが望ましいので、ルールに則った金融政策が望ましい。一方、私的情報を活用するメリットを享受するには、裁量的政策が望ましい。この両方の兼ね合いで最適な金融政策は、ある程度の幅のあるインフレ目標を与えて、その幅の中で裁量的に金融政策を実行することである。

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    • 発表者:Greg Kaplan (Princeton University)
      "The Wealthy Hand-to-Mouth" (with Gianluca Violante and Justin Weidner)



      所得を貯蓄しないで消費する人々を、Hand-to-Mouth (HtM)消費者という。通常は低所得者のことであるが、ここでは、新しい概念として、Wealthy Hand-to-Mouth (W-HtM) という区分を提起する。不動産など非流動的な資産を保有するが、流動的な資産をほとんど保有せず、一時的な所得をすべて消費するような消費者をW-HtM と呼ぶ。アメリカでは、人口の三分の一がHtMであり、そのうち三分の二がW-HtMであり、残りが低所得者である。この区分の人々を無視したマクロモデルでは、限界消費性向が過小評価になるか(低所得者のみをHtMととらえた場合)、または、過大評価になる(W-HtMの資産を無視した場合)。したがって、W-HtMの人口をデータから正しくとらえることは、財政政策の効果を考察する上で非常に重要である。

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    • 発表者:Tomoaki Yamada (Meiji University)
      "Response of Inequality to a Growth Rate Slowdown in Japanese Economy during the Lost Decades" (with Nao Sudo and Michio Suzuki)



      家計調査のデータを使った分析から、「日本の1990年代~2000年代について成長率が低下するのと同時に所得や消費の不平等の度合いが小さくなった」ということが示された。これは特に高所得層の所得の伸びが鈍化したことが理由である。また、1990年代以降は、所得と消費の相関が弱まったことも示された。これらの理由を理論モデルで分析すると、技術進歩率の低下によって、生産の成長率が低下すると同時に、消費の不平等度の成長率が低下することが分かった。また、経済成長率が下がると、将来所得が小さくなるため、今期の所得を貯蓄する割合を増やして消費を平準化する傾向が増える。このため、所得と消費の相関も低下する、と説明できる。

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    Closing Remarks

    • Yongsung Chang
      Professor, University of Rochester