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2018.04.03

南スーダン部隊撤収1年から考える日本の国連PKO参加

  • 本多 倫彬
  • 研究員
    本多 倫彬
  • [研究分野]
    外交・安全保障

 南スーダン国連PKO(UNMISS)から自衛隊施設隊が撤収することを発表してから1年が過ぎた。その後自衛隊は、5月までに主要な部隊を撤収させ、わずかに4名の自衛官を司令部要員として南スーダンの首都ジュバに残すのみとなった。自衛隊はこれまで多くの国連PKOに参加してきたが、現時点で派遣している人数は、この4名のみである。世界には2018年3月現在、15の国連PKOミッションが展開(14に減る見込み)し、警察官と軍事要員だけでも90,000名以上が参加している。この現状を鑑みれば、積極的平和主義を掲げて、世界で責任ある取り組みを進めるとしてきた日本政府としては、かなり寂しい数字である。

 この背景には、日本の国連PKO法が、もはや現代の国連PKOに対応困難な現実がある。南スーダンで露呈したように、近年の国連PKOの任務環境はかつてよりもはるかに危険になっている。実際、2013年からの5年間で、国連PKO要員約200名が攻撃や地雷などで亡くなった。それに加えて、緊迫度を増す朝鮮半島情勢や、中国の積極的な海洋進出など、日本を取り巻く安全保障情勢が厳しさを増す現状において、日本から遠い地で行う「国際貢献」に、自衛隊の部隊を出す余裕はないという声もしばしば聞く。一見、もっともな議論ではある。

 国連PKOの危険性に関連して、2017年末に国連は、増加する要員の犠牲を踏まえて、要員の安全の見直しを目的にした調査報告を発表した。とりまとめを行ったサントス・クルーズ(ブラジル陸軍退役中将)の名を冠して「クルーズ・レポート」と呼ばれる報告書は、「国連旗と(国連を示す)ブルーヘルメットは、もはや要員の安全を守らない」ことを強く主張した。従来、国連PKOでは、紛争当事者が国連の権威を尊重することを前提に、軽武装・非武装の要員の安全が担保されてきた。現代の国連PKO要員の犠牲者増加の背景には、それが失われていることがある。したがって、現代の国連PKOは、平和的解決を前提にした思考を改め、訓練や装備、情勢分析など、さまざまな分野で現実を踏まえた改革を進めなければならないとクルーズ・レポートは提言した。要するに、武力以外に理解できない脅威に対して、必要な時には武力の行使を辞さない、より「強い」国連PKOが必要としたのである。

 同レポートに対する評価はともかく、犠牲者が増え続ける国連PKOが、変革の必要に直面していることは疑いない。そもそも国連PKOは冷戦期に、軽武装の軍隊が国連の権威のもと、中立・公平な立場から国家間紛争の停戦監視を担う取り組みとして始まった。冷戦後には、国際社会が内戦への対処を必要とする過程で、平和構築を担う大規模な国連PKOへと拡大した。それらは、国際社会主導の介入を受けたのち、停戦合意後の平和構築を担う形態で定着した。

 たとえばカンボジア内戦後のUNTAC、東ティモール独立闘争と軍事介入後のUNTAETとUNMISETなど、日本にとっては自衛隊派遣の成功体験である国連PKOもまた、周辺国や国際社会による介入の後始末の側面を持つ。前述した現在最も危険なマリの国連PKO(MINUSMA)もまた、フランス軍の介入を受けて設置された。裏を返せば、国連PKOは、先進諸国や周辺諸国による軍事介入ののち、安定化と復興を担わされてきた「実績」を持つ存在である。多くの紛争が存在する現在、紛争後の後処理を担う有力な存在が現れない限り、国連PKOはこれからも、紛争後の後処理に駆り出される存在ということでもある。

 周知のようにアラブの春以降、中東・北アフリカを中心に不安定した地域は、安定化の兆しがないままである。そうした地域がいずれ安定化に向かうとき、国連PKOに再び光が当たることになる。クルーズ将軍の指摘を踏まえれば、強力な武力行使を任務に持つ国連PKOが次々に設置され、さらには実態として国連PKO自身が紛争に介入することが主流化する可能性さえも否定は出来ない。いずれにしても現在進む国連PKO改革は、将来の中東・北アフリカ地域での紛争後の後処理の方向性を形作っていくことになる。日本がこれらの地域に無関係であり続けられるとしたら、国連PKOから離れ続けることは一つの選択肢かもしれない。しかし、中東・北アフリカ地域に多くを依存する日本にとって、そうした地域の立て直しに国際社会の注目が集まったときに、係らないことが困難になることは、1990年代初頭の湾岸戦争以来の日本の国際平和協力のこれまでの教訓だろう。

 仮に準備をしないまま、中東・北アフリカなどでの将来の国連PKOに日本が自衛隊の部隊派遣を検討するとき、日本にとってまったく未知となる新しい(そしておそらく危険度が高い)国連PKOに突然、直面することになる。それはおそらく、UNMISSが結果的にそうなったように、現場の厳しい環境に、無理矢理に日本の法律を当てはめて派遣する事態ということになるだろう。

 したがって日本にとって、今すぐに部隊派遣は困難であるにしても、国連PKOをどのように活用して紛争の処理や平和活動を進めるのか、国連PKO改革に向き合い、できれば改革の議論でイニシアティブを発揮する意味は大きい。もっともそれは要員派遣4名の国には、現実には困難である。したがって実際には、改革に向けてどのような議論が行われ、現場の変革がどのように進むのか、情報を把握して、それに対応できるように備えることが必要だろう。それは、部隊派遣という「実績」ではない形で、どのように国連PKOの改革に食い込む手段を得るのか、という日本にとって難しい挑戦でもある。

 そのためには、日本にとって死活的に重要ではない「国際貢献」という国際平和協力観とは異なる意味を、国連PKOに見出せるかどうかが鍵となる。言い換えれば、日本自身にとっての国際平和協力の意義と必要性とを、日本自ら再定義して取り組むことができるかどうか、そのことが問われている。

本多 倫彬 その他コラム・メディア掲載/論文・レポート

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