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2015.02.13

インフラ経済協力は質で勝負

産経新聞【宮家邦彦のWorld Watch】(2015年2月12日)に掲載

  • 宮家 邦彦
  • 研究主幹
    宮家 邦彦
  • [研究分野]
    外交・安全保障

 今回の原稿は羽田空港到着便の中で書いている。先週同様、東南アジアでの仕事が入ったからだ。6~7時間の夜間フライトならエコノミークラスでもあまり苦にならない。今ならゼロ泊3日の強行軍出張だって可能だろう。

 仕事柄、歩き回る地域はアジアや中東・北アフリカが多かった。最近はどこへ行っても経済協力分野での中国の躍進を感じる。特に、インフラ整備関連で中国企業の存在感が急速に高まっている。一体なぜだろう。関係者に聞けば、とにかく値段が安い、何をしているかは知らないが相手国政府への食い込みが半端でないという。技術的には及第点でも最終プロダクトは「安かろう、悪かろう」らしい。もちろん、結果的には高くつくのだろうが、途上国側は意に介さない。こうした問題は、日本のODA(政府開発援助)の現場でも頻繁に起きているそうだ。

 偶然にも今週、約11年ぶりでODA大綱が改定された。名前を「開発協力大綱」と改めただけでなく、内容的にも最近の国際情勢を反映した、より充実したものとなっている。思い返せば、1992年の最初のODA大綱から二十数年、国益を前面に据え、被援助国の軍隊との連携にも言及しつつ、質の高い成長を目指すまで開発協力政策は進化してきた。湾岸戦争後の日本のODAのあり方に疑問を持ってきた筆者には実に感慨深い変化だ。外務省を辞めてもう10年になるが、外から見ても日本の官僚組織は随分変わったものだと実感する。

 他方、日本の開発協力にはさらなる進化が求められている。筆者はODA専門家ではない。経済協力を担当する部局にいたこともない。だが、民間の門外漢だからこそ感じる問題点もある。それは日本の国益が日本人と日本企業の利益の集合体であるという当たり前の事実だ。さらに、経済協力の目的が相手国の開発・発展であれば、その相手国が中長期的に裨益(ひえき)(助けになること)する援助こそ望まれるのではないのか。

 例えば、インフラ経済協力の現場を想像してみてほしい。中国のやり方は狩猟型、すなわち中国人の、中国人による、中国人のための経済援助だ。国際標準をはるかに下回る価格を提示し、多数の中国人労働者を自国から派遣して、被援助国には「箱もの」しか残さない。相手国の大統領は壮大な建造物をもらってご満悦だろうが、一般庶民はほとんど裨益しない。これに対し、日本の開発援助は農耕型だ。現地人を労働力として活用し、先端技術も惜しみなく移転する。価格は多少高いが、品質が高いので長持ちし、結果的に割安となる。これこそが日本が世界に誇るインフラ輸出の長所だろう。

 ところが、こうした要素も経済協力の現場ではなかなか評価されないらしい。ODAプロジェクト決定の判断基準はどうしても価格の多寡になりがちだからだ。もちろん、価格は重要な要素だが、最終完成品の品質も同様に大事ではないのか。例えば、価格を判断する前の段階の技術的評価をより厳密にすれば、そのプロジェクトの中長期的品質・効用は高まる。これこそ相手国の質の高い中長期的成長に資する支援ではないのか。

 新大綱には「インフラ」に言及した部分が9カ所ある。いずれもインフラ整備が「自助努力や自立的発展の基礎」であり、「質の高い成長」を実現するための支援、そのための「官民連携・自治体連携」が重要だと説いている。されば、官民連携の下、質の高い成長のため、質の高いインフラを重視してはいかがか。もちろん、民間企業にも努力すべき点はあろう。最新鋭技術を投入せず、より廉価のプロジェクトとすべしとの声があることも否定しない。

 しかし、現地での用地買収、支払い遅延、突然の法令変更など不確定要素があればコストは跳ね上がる。質の高いインフラ整備について官民協力が深まることを期待したい。

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