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2013.11.19

日露2+2は異例にあらず 閣僚会合の成果と課題

産経新聞【宮家邦彦のWorld Watch】(2013年11月14日)に掲載

  • 宮家 邦彦
  • 研究主幹
    宮家 邦彦
  • [研究分野]
    外交・安全保障

 これまで日本では2プラス2(外交・防衛閣僚協議)の相手は同盟国と相場が決まっていた。それだけに2日に開かれた日露2プラス2会合は開催自体が「異例」とも「画期的」とも評価された。今週はこの閣僚会合の成果と課題について考えてみたい。

 まずは主要紙の関連社説をじっくり読み比べてみた。論旨はさまざまだが、筆者が気になった論点は3点に集約される。ここは誤解を恐れず、感じたままを書いていこう。

 第1に、旧仮想敵国ロシアとの2プラス2会合は「異例」という論調が一部ながら目立ったことだ。確かに、ロシアとは平和条約を結んでいない。だが、2プラス2会合は必ずしも同盟国や友好国とだけ開くものではない。現にロシアだって仏、米、伊、英と同種の会合を開催しているではないか。

 今や日本も2プラス2会合の戦術的効用を考えるべき時期に来ている。その意味で今回のロシアはもちろんのこと、例えば中国、さらにはイスラエル、エジプトといった中東諸国との2プラス2会合だって決して異例ではないはずだ。

 外交と防衛を一体として考えるこうしたアプローチは、日本政府部内で国家安全保障政策を企画・実施する上で極めて有効だ。大変失礼ながら、防衛官僚・制服組の中には日米同盟以外の重要問題に関する知識と経験に乏しい向きも少なくない。例えば、2プラス2会合をイスラエル、エジプトなど中東諸国とも開けば、日本政府の安全保障問題に関する発想そのものが深化し、より戦略的な政策作りが可能になると信ずる。

 第2に筆者が強調したいのは、日露2プラス2会合が領土問題を解決するための場ではないということだ。

 一部の社説は領土問題に焦点を当て、「領土問題につなげよ」とか、「領土問題を置き去りにするな」といった論調が目立った。しかし、冷静に考えてほしい。今回は日露間で初めて2プラス2会合が開かれ、経済だけでなく安全保障分野の協力をも議論する場が設定されたにすぎない。同会合と領土問題は直接関係なく、これで直ちに領土問題が進展するなどと期待すること自体現実的ではない。

 最後は、日露閣僚会合が中国を念頭に置いたものとか、対中牽制を意図したものと期待すべきではないことだ。

 政府関係者はともかく、主要紙社説の多くは日露の「対中牽制狙い」を前提に書かれていた。こうした発想は事実でないばかりか、戦略的な読み誤りにもなりかねない。

 同会合の直前、ロシア外務省高官はインタビューで、「ロシアは中国と日本について議論しておらず、日本とも中国につき議論することはない」との趣旨を述べ、日本の一部にある日露による対中牽制論にくみしない姿勢を明らかにしている。恐らくこれはロシア側の本音だろう。日本人は日本側の望むような形でロシア側が対中牽制に乗ってくる可能性がないことを正確に知るべきだ。

 今回はテロ・海賊対処のための共同訓練、サイバー安全保障に関する協議の立ち上げなどに合意するとともに、安倍晋三首相の「積極的平和主義」についてロシア側から理解が示されたという。日本がロシアとの関係改善を進めることには大賛成だ。

 しかし、現在のロシアの対日政策はロシア側の戦略的決断の結果として進められているわけでは決してない。このことは対露関係で常に念頭に置くべきである。もちろん、ロシアは中国を意識している。だからといって、今のロシアに対中牽制を慫慂(しょうよう)すれば結果は逆効果だろう。ロシアは懸念を深めるし、中国側もさらに警戒心を高めるだけだ。

 今日本にできることは、日露間で信頼醸成が着実に進み、一定のルール作りが可能であることを中国に具体的に示すことだ。ロシアの対中戦略観が変わるまで日露による対中牽制を期待すべきでないだろう。

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