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2011.06.29

2プラス2:日米の温度差に思う

  • 辰巳 由紀
  • 主任研究員
    辰巳 由紀
  • [研究分野]
    外交・安全保障

 6月21日、ワシントンで4年ぶりに日米安全保障協議委員会(2プラス2)が開催された。日本のメディアでは開催された翌日に読売、朝日、産経、日経など主要な新聞でこの会議の様子が報じられた。報道の内容は普天間基地移設期限の先送りにフォーカスしたもの、24項目の共通戦略目標のうち、対中戦略を意識した項目に焦点を当てたもの、など様々であった。
 しかし、である。アメリカでは2プラス2については殆ど報道されていない。2プラス2前に普天間飛行場移設期限が見直される見込みである、という記事が掲載された程度だ。会談後に、その内容を伝える記事も全くと言っていいほど見当たらない。グーグルで検索してみたら、2プラス2後の記者会見でのクリントン国務長官とCNN記者とのやり取りがユーチューブに載っていたのが見つかった。張り切ってビデオをみたら、質問はアフガニスタンからの米軍撤退やサウジアラビアでの女性の権利についてのものであった。しかも、2プラス2後1週間も経っているのに、まだ38人しかこのビデオを閲覧していないという関心の低さである。
 数週間前の菅総理のG8出席やG8での日米首脳会談への関心の低さも似たようなものだった。日本の新聞が一斉に菅総理のG8演説を報じた日のワシントン・ポスト紙の一面に堂々と掲載されていたのは「ワシントンDC近郊でアジア系住民の割合がこの10年で劇的に増加している」という記事。国際面で日本について掲載されていた記事は福島第一原発で事故の対応を続ける現場職員への健康への懸念が焦点のものであった。日米首脳会談にいたっては、オバマ大統領がフランスで行う2国間会談が列挙されるパラグラフで言及されたのみ。日米関係に注目しているのは、アメリカ国内でもほんの一握りの「日米関係コミュニティ」に属する人間だけなのだなぁ、とつくづく思わされる。
 このような日米間の温度差は今に始まったことではない。冷戦時代こそ、ソ連専門家が幅をきかしていたが、今のアメリカの外交・国防政策の「主流」は核戦略や不拡散問題などのファンクショナリスト(機能分野屋)と呼ばれる人々で、地域専門家は傍流だ。さらにその地域専門家の中でもアジア政策の主流は中国、米中関係の専門家が占めている。自分のその端くれである日米関係の専門家は、傍流も傍流、超マイナーな存在だ。米国しか同盟国を持たず、基本的には東アジアを超える地域で活発に外交を展開することが少ない日本と、世界中に同盟国を抱え、ヨーロッパからアフリカまで相手にして外交を展開する米国の違いである。なので、日本が米国に「最も大事な同盟国」という言う時の米国は「オンリーワン」あるのに対し、米国が日本に対して「最も大事なパートナー」という場合、殆どの場合「最も重要な同盟国の一つ」という言い方がされる。つまり、米国にとっての日本はone of many というわけだ。
 実は、この日米の互いに対する認識のギャップが不幸なすれ違いを生んでいることが多い。日本はいつも「米国は日本を大事な同盟国だと思ってくれている(はずだ)」という思い込みで行動する。しかし、日本という国がアメリカの外交・国防政策全体の中で占めるウエイトは微々たるものなのだ。もちろん、今後、米国が中国の将来に警戒感を持ち、中国の軍事力・経済力にどのように伍していくかを考える中で、日本との関係は重要にはなる。ただそれも、日本がどのような役割を果たしていけるのか、が明確になればこそ、なのである。
 このような目で今回の2プラス2を見直してみると、両国の共通関心事項のリストは増えたが、集団的自衛権の問題や武器輸出三原則の問題など、同盟の実効性を担保するために日本がやらなければならないことのリストは2005年に日米同盟の再定義を行ったとき、もっと言えば1990年代半ばに日米同盟の再確認を行ったときから殆ど何も変わっていない。つまり、日本はこの方面で「全く進歩していない」のだ。しかも、アフガニスタン、イラクなど、米軍が活動を継続しており、且つ米国民の関心も高いエリアでの日本の存在感はゼロ(ちなみに、自衛隊がイラクで活動していた時期も、その事実すら知らない人が大半だった)。さらに、今の日本の政治状況を見るにつけ、日本の安保政策が直面する課題に前進が期待できる環境ではない。この状況でいくら「より深く、幅広い同盟」を喧伝しても、単なる絵に描いた餅でしかないのではないか、と感じてしまうのは、あまりに穿ちすぎているだろうか。

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