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2018.01.19

ICTガバナンス: 先進国共通の課題に

電気新聞「グローバルアイ」2018年1月9日掲載

  • 栗原 潤
  • 研究主幹
    栗原 潤
  • [研究分野]
    米国情報・ネットワーク

 昨年秋以来、海外の友人の口から必ず出てくる言葉がある。「日本のガバナンスが問題だ」、と。彼らは政府・政党や企業、さらには学術研究機関、スポーツ団体のガバナンスのことを指しているのだ。筆者は「ガバナンスは日本に限った問題ではない」と反論している。内向きで保護主義的ポピュリズムが支配している米国しかり、移民を恐れて極右政党が胎動する欧州しかり、どの先進国においてもガバナンスが揺れ動いている。また日進月歩の情報通信技術(ICT)を背景として急速に拡大するサイバー空間や熱狂的ブームを迎えている人工知能(AI)、ロボットに関する技術分野においては国際的法秩序すら定まっていない。

 かくして正当な権力を強力かつ適切に行使する主体がないという理由から、あるいは、これまで強力な権力を行使していた主体が弱体化した結果、全地球的な規模で揺れ動くガバナンスが問題視されているのだ。

 先日、カリフォルニア大学バークレー校のスティーヴン・ヴォーゲル教授から昨年秋の訪日調査のまとめが最終段階に入ったとのメールが届いた。知日家の彼が、日本のガバナンスにいかなる判定を下すのか、興味津々であると同時に、彼の意見をかがみとして日本のガバナンスを少しでも洗練したいと考えている。

 教授とは昨年秋の銀座で食事をしつつ、コーポレート・ガバナンスを中心に意見交換を行った。企業部門のガバナンスは緩やかな景気回復を背景に際立った問題が無いかのように映っていた。だが、好調の陰には労働者側に様々なプレッシャーと犠牲が隠れているとして私見を述べた次第だ。そして優秀な労働者を抱える日本はICTを活用し、彼等の勤労意欲をそぐことなく、企業部門のガバナンスをさらに洗練しなくてはならない、と話した。

 「僕は現状に満足していない。OECD(経済協力開発機構)の報告書をはじめとして多くの研究が指摘している通り、日本のICTガバナンスは国際的劣位にある。企業がこの点を改善すると企業業績がさらに上向くはずだ。ICTガバナンスの成否を決定する要因はステークホルダーの個々の能力と彼らの信頼関係だ。この両者を持つ日本はICTガバナンスを洗練すれば必ず明るい将来を迎えることができる」と指摘し、個人的体験に触れて、日本社会全般の優れた点を具体的に語った。

 昨年夏、筆者は通勤電車の網棚にカバンを忘れてしまった。疲労困憊で注意力を喪失した故の大失態だ。会社のIDと自宅の鍵、小銭入れ、そして研究資料が全て入った外付けハードディスクが入っており、一時は顔面蒼白となった。ところがその日の午後、鉄道会社の事務局に連絡すると、「無事に保管されている」とのこと。この体験を外国の友人たちに語ると「さすがは日本だ。僕の国では考えられない」という驚きの言葉が必ず返ってくる。

 こうした理由から筆者は日本人の潜在能力が完全には発揮されておらず、企業のICTガバナンスが改善すれば日本が必ず活気を取り戻すと考えている。かくして労働者に配慮したICTガバナンスを志向することこそ、日本のガバナンス問題を解決する突破口になると考えている。

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