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2017.06.29

ロボット: 需要旺盛な米国、勢いづく中国

電気新聞「グローバルアイ」2017年6月21日掲載

  • 栗原 潤
  • 研究主幹
    栗原 潤
  • [研究分野]
    米国情報・ネットワーク

 今月上旬に大阪で開催された「サービスロボット開発技術展」を訪れ、最新技術を実際に観察し、同時にセミナーを聴講して、現状と課題を具体的に考える機会を得た。

 日本は産業用ロボットに関して揺ぎ無い地位を築いている。問題は、今なお課題が山積し、実用化には更なる研究と時間が必要と予想されるサービス分野だ。展示会では、医療、教育、介護等の分野における技術の現況とともに克服すべき課題を肌で感じることが出来た。と同時に、グローバル時代における日本の問題も学ぶことが出来た次第だ。

 そのなかで最も印象に残ったのは日本を代表する専門家の一人、本田幸夫氏の講演であった。聴講後、幸運にもしばらくの間、二人で米欧を中心に世界の最新動向に関して意見交換を行うことが出来た。二人には共通した問題意識がある-少子高齢化に関し世界の最前線に位置する日本が、豊かで安定した経済社会を維持・発展させるためにロボット技術を十二分に活用することだ。勿論、この課題を我々だけでは解決出来ないが、協力して若い世代に向けた情報発信をしたいと願っている。

 本田氏は、著書『ロボット革命-なぜグーグルとアマゾンが投資するのか』の中で、日本は「技術では勝っても事業化の段階でアメリカに負けていく」危険性を指摘した。近年衰えを感じさせるとはいえ、米国はシリコンバレーを代表とするベンチャー精神旺盛なハイテク企業群、そしてスタンフォード大学やMITといった高等研究機関、更には国防高等研究計画局(DARPA)という軍事技術開発組織を擁し、それらがロボットの事業化に注力している。米国に加えて、膨大な資金力と圧倒的な人的資源を背景にした中国の大胆な国家的技術開発プロジェクトも無視出来ないのが現状だ。

 また本田氏は、「イノベーションは技術革新以上に社会を革新」するが「日本は技術ばかりに注目しすぎている」点を指摘する。これに関し、サービスロボットの利用者側--すなわち、介護施設の管理者や介護士、あるいは教育や医療の関係者の存在や意見を、展示会で見つけることを出来なかったのが残念だった。

 さて、誰であっても人は老いる時を迎え、歩行困難を感じる。そうした時に期待されるものの一つが歩行支援用の外骨格ロボットだ。この分野には、サイバーダインを筆頭に優れた日本企業が存在する。だが、筆者が懸念するのは技術面よりも事業化の側面、すなわち需要者側の財源だ。

 多くの関係者は、米国食品医薬品局(FDA)が初めて認可した歩行支援ロボットは、イスラエルのベンチャー企業リウォーク・ロボティクスの製品であることを知っている。日本の最先端企業の一つ、安川電機と関係が深い同社の製品は、歩行困難となった傷痍軍人のため、米国退役軍人省(VA)が導入を最近積極的に行っている。このように米国のロボット技術開発には、米国国内の裕福な高齢者という一般需要に加え、膨大な資金源を持つ政策的需要が背後に存在する。すなわち米国は、科学技術分野の一般政府予算に加え、ロボット兵器に注力する国防総省(DоD)、原子力事故関連のロボットに関心のあるエネルギー省(DOE)、更にはVAが拠出する巨額の開発資金を持っているのである。

 かくして多様かつ旺盛な需要を擁する米国、更には勢いづく中国に対して、日本のロボット技術はいかなる形で優位を維持し、事業化してゆくのか。今、日本は厳しい課題を突きつけられているのだ。

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