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2017.04.10

「東京=ケンブリッジ・ガゼット:グローバル戦略編」第96号(2017年4月)

小誌は大量の資料を網羅的かつ詳細に報告するものではない-筆者が接した情報や文献を①マクロ経済、②資源・エネルギー、環境、③外交・安全保障の分野に関し整理したものである。紙面や時間の制約に加えて筆者の限られた能力という問題は有るが、小誌が少しでも役立つことを心から願っている。

  • 栗原 潤
  • 研究主幹
    栗原 潤
  • [研究分野]
    米国情報・ネットワーク

 米国新政権初の米中首脳会談に関し、その成果に対して期待を抱いている。政治経済、更には環境保全を巡って--協調か対立か--どちらの態度で両国が臨むのか、それ自体が世界の命運を決定づける。これに関し、年初にアマゾンに予約した本--ハーバード行政大学院(HKS)の第4代校長グラアム・アリソン教授によるDestined for War: Can America and China Escape Thucydides's Trap?--の到着を楽しみにしている。また、何世紀にもわたり政治経済的規範の全世界的普及に主導的役割を果たしてきた欧州は、如何なる形で変容を遂げていくのか。昨年10月にアマゾンに予約をした本--昨年久しぶりに面談したジャーナリスト、ビル・エモット氏によるThe Fate of the West: The Battle to Save the World's Most Successful Political Idea--の到着も、彼の来日と共に楽しみにしている。

 小誌前号で触れた小論("The Jacksonian Revolt")は米国政治を考える上で優れた資料である。これは著者(米国の政治学者にしては珍しく(?)控え目な態度をとるミード氏)の名著(Special Providence, 2001)に基づき、4つの米国の伝統的外交思想--①内向きでポピュリスト的Jacksonian、②米国民主主義を最重要視するJeffersonian、③理想に燃える積極外交的Wilsonian、④積極外交を通じ米国の国益を追求するHamiltonian--の中から、①を易しく解説したものだ。


 巷間、AIの話で溢れている。米欧と共に中国も現在AI(人工智能)開発に注力しており、将来の全世界的な協調と競争が予想される。弊所(CIGS)もAIに関し、2月28日に会合を開催した(CIGS International Research FellowでStanford Univ.の櫛田健児氏を招いたworkshop「加速するAI: もうすぐそこに来ているディスラプション」)。会合では、「日本のチャンス」にも議論が及んだが、これについては、会合の直前に公表された櫛田氏のインタビュー記事が参考になる(「シリコンバレーの日本企業が陥る、10のワーストプラクティス」 http://svs100.com/kushida2/を参照)。

 Silicon Valleyに進出した日本企業の数は過去最大を記録したがその成果は芳しくない。櫛田氏が日本企業に共通する10の問題点を指摘したが、その中で筆者が注目した箇所を、まとめたものを下に記す。

◎現地のecosystemへの貢献という点では日本企業の存在は未だ非常に小さいとのこと。彼等は「うろうろしているだけ」で、ビジネスに繋がっていないと手厳しい。続けて櫛田氏は、Silicon Valleyで困った問題を日本企業が引き起こしていると語る。即ち、情報収集に関し目的が不明確な駐在員が多く、このため現地のスタートアップとの「アポ取り」をしてもその殆どが「ふわっとした」情報収集に終っている。その結果、米国側はビジネスに直結しないアポイントの多さに辟易して日本企業を避けはじめ、逆に障害として「ビジネスに本気」の日本企業を間接的に妨害しているらしい。

◎何の戦略的目的も持たないまま、Silicon Valleyへと日本の本社幹部は表敬訪問の形で訪問する。このために、あたかも「サファリ・パークに動物を見に来て、それで満足して帰る」かのような印象を与えていると、櫛田氏は語る。

◎本社幹部が求めている情報とは、日本のthe mass mediaで「もてはやされている情報」らしい。この種の情報はSilicon Valleyでは既に「周回遅れ」となっている情報であると櫛田氏は手厳しい。にもかかわらず、本社の幹部は「新聞でも読んだ事が本当に起きているのだと納得し、また喜んでいる」と櫛田氏は観察・判断している。


 この記事を読み、以前筆者が北加協会(Japan Society of Northern California (JSNC))主催の会議に招かれ、講演後、香しいワイン(Mount EdenやOpus One等)を楽しんだ時に、現地の友人が囁(ささや)いた言葉を思い出している。 即ち、「①現地の人々よりも駐在員同士の交流や日本の本社との連絡に専心する駐在員、②最新の情報や論文を知らず、同時通訳の無い会合では沈黙する研究者、③通訳を巧みに使えず、更には意思決定にも逡巡するする幹部社員...」。

 だが、櫛田氏によると、最近、Silicon Valley在住の日本人の中に、才能と勇気が溢れる若い人材が現れ出てきたらしい。そうした逸材に期待しまた応援することこそ、我々の役割だと考えている毎日である。



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「東京=ケンブリッジ・ガゼット:グローバル戦略編」第96号(2017年4月)PDF:395.4 KB

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