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2015.12.14

中国: 互恵関係見極め選択的強化を

電気新聞「グローバルアイ」2015年12月9日掲載

  • 栗原 潤
  • 研究主幹
    栗原 潤
  • [研究分野]
    米国情報・ネットワーク

 中国は太古から現代に至るまで近くて遠い国だ。最近は、"新常態"と呼ぶ発展段階の移行に伴い、中国経済に新たな"まだら模様"が出現して、我々の目には、悲観と楽観が交錯する姿として映っている。こうしたなか、我が国経済の足元を固めるため、日中両国の互恵関係を冷静かつ正確に見極め、選択的に強化する事が重要だ。以上の目的意識を念頭に11月中旬に訪中し、上海に在る復旦大学の経済学院や米国研究センター等を訪れた。20以上の研究所を擁する経済学院の最上階には談話室があり、そこで友人達とインフォーマルで突っ込んだ対話を行ったが、今回は諸兄姉に、①通貨、②通商、③安全保障の話を中心に手短にご紹介したい。

 人民元の使用に関し20年以上の経験を持つ筆者だが、恥ずかしながら紙幣にアラビア文字が印刷されている事を知ったのは、ほんの数年前。中国に住むイスラム教徒の存在を再認識し、不安定な情勢に包まれる中央アジアと隣接する中国との関係の複雑さを痛感している。

 その人民元が、中国の台頭に伴い、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)構成通貨として、米国、EU、英国、日本の通貨と共に来年秋から組み込まれる事となった。人民元の比重は、米ドルを除いて、欧・英・日の比重を低下させ、しかも円の比重を上回る形となった。とは言うものの、その国際的な役割は、同国の通貨・金融制度の不透明さゆえに未だ見極め難い。

 国際決済通貨としての人民元の将来を占う上で考えるべき要因の一つが、壮大な経済圏構想"一帯一路"だ。その一環として中央アジアを通じ中国と欧州諸国とを結ぶ鉄路(渝新欧)が、いかなるペースで発展するのか、興味は尽きない。先月の16日には、日系企業による中国・欧州間の一貫輸送サービスが始まった。その結果、武漢からハンブルグまで、陸路でのリードタイムが約14日。従来の海上輸送に比べて約25日程度の短縮となる一方、輸送コストは約2倍にとどまり、空輸と比較すると約8分の1になる。こうした陸運発展を期待し、先月、中国と欧州の各地で上記の陸上輸送に関する会合が開催され、中国とポーランド等旧東欧諸国との貿易量の急増が報告されている。

 こうした経済分野の新たな動きを考える時、気になるのは米中関係に与える影響だ。両国が協調的に臨むのか、それとも競争的・対抗的に動くのか、それによって日本の立ち振る舞いの力点も微妙に変わることは言うまでもない。

 11月5日、カーター米国防長官は、"棍棒"というニックネームを持つ空母「セオドア・ルーズヴェルト」艦上で、南シナ海での米国の存在を強調した。これに関し中国の友人とは、「後世の優れた歴史家は必ずこの動きに触れるに違いない」と語り合った。なぜなら約百年前、ルーズヴェルト大統領は、"優しい語り口と棍棒"という(武力による)砲艦外交を信条とし、日露戦争後に台頭した日本帝国に対して圧力をかけたからだ。筆者は中国の友人達に、「20世紀の日本と同様に、21世紀の中国は慎重さと賢明さが試される時だね」と語った次第だ。

 上述の政治経済問題のほか、西太平洋の国際関係は自然環境や歴史という複雑な課題を抱えている。言葉の問題に加え、異なる政治体制下で面子や建て前を重んじる中国を相手に、息の長い信頼関係を築き、したたかでしかも洗練された対中観を体得するには、"本音"で語り合える経験が不可欠だ。こうした分野での若人の活躍を祈る毎日である。

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