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2015.05.28

中国人旅行客「爆買い」の勢いはさらに強まる

電気新聞「グローバルアイ」2015年5月27日掲載

  • 瀬口 清之
  • 研究主幹
    瀬口 清之
  • [研究分野]
    中国経済・日米中関係

 今年は日本各地の観光地で異変が起きている。2月後半の中国の春節(旧正月)と3月下旬から4月上旬の日本のお花見の時期に、これまででは考えられないほど多くの中国人観光客が日本を訪れた。お土産を大量に購入する様子は連日テレビや新聞・雑誌等で報道され、「爆買い」という流行語まで生まれた。今年の1~3月に日本を訪れた中国人一人あたりのお土産購入額は17万円を超え、数万円程度の他国の観光客をはるかに上回る。
 この衝撃的な出来事を通じて、日本の製品・サービスに対して中国人が高い評価と旺盛な購買意欲を持っていることが一気に日本全国に知れ渡った。一部に中国人観光客のマナーの悪さを批判する声もあるが、それ以上に日本の製品やサービスを爆買いする裕福な中国人を歓迎するムードが勝ったのではないだろうか。

 昨年の訪日中国人客数は241万人(前年比83%増)と急増したが、今年はさらに勢いを増し、1~3月累計の訪日中国人客数は92万人(前年比93%増)に達した。この勢いが続けば今年は年間460万人を上回る。中国人の爆買いのおかげもあって、2014年度の旅行収支は2,099億円と、1959年以来55年ぶりに黒字に転じた。
 中国人の日本旅行ブームは昨年の春節休暇に火が付き、本年1月19日から実施された中国人向け訪日ビザの発給規制緩和の効果で勢いが一段と加速。ビザ取得のための所得基準や家族のビザ取得規制が緩和されたため、とくに個人観光客が急増した。近々大型クルーズ船で訪日する中国人旅行客に対してビザが免除される措置も開始されることから、増勢はますます強まる可能性が高い。

 筆者はかねてより中国人旅行客の急増とともに、日本国内で中国人のマナー違反が大問題になるのではないかと心配していた。幸いにも今のところそれほど深刻な問題にはなっていない。その背景には実は中国側の知られざる努力がある。
 訪日する中国人旅行者に対し、中国政府の国家旅遊局が携帯メールを通じて、日本滞在中はマナー順守を心がけるよう呼びかけている。その効果もあって鉄道車内では大きな声で話をしない、携帯電話をかけない、乗り物に乗る時やエスカレーターではきちんと並ぶといったことなどに注意している中国人を目にする。多くの日本人は中国国内の平均的なマナーの実態を知らないことから、日本滞在中の中国人の努力に気付くことはあまりないと思われるが、筆者の目から見ると、その努力は相当なものであると映る。もちろんそれでも各地で中国人観光客のマナーの悪さを指摘する声は多い。しかし、もし中国人観光客が自らマナー順守を心掛けようとしていなければ、マナー違反問題は日本各地で多くの日本人の強い反発を招き、大きな社会問題になっていたものと思われる。
 中国人旅行客のマナー違反が日本国内で厳しく指摘されていることは中国国内のテレビ等でも報道されているため、中国人自身もかなり気にしている。先日北京に出張した際、知日派の中国人との会合の席上、中国人のマナー違反を憂慮する見方が中国側から指摘された。筆者は上記のような中国人の努力の効果について説明したが、中国側の憂慮は収まらなかった。そうした意識が中国国内の一般庶民の間に広く浸透していくにはある程度の時間を要するが、中国の生活水準の向上と共に、この意識は後戻りしないと考えられることから、この問題は今後着実に改善に向かうものと期待している。

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