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2014.12.04

アジアインフラ投資銀設立の行方

電気新聞「グローバルアイ」2014年11月26日掲載

  • 瀬口 清之
  • 研究主幹
    瀬口 清之
  • [研究分野]
    中国経済・日米中関係

 APEC首脳会合直前の10月24日、中国の呼びかけに応じて、アセアン諸国、インド等21カ国が「アジアインフラ投資銀行」(以下、AIIB)設立準備覚書に署名した。来年末の正式発足に向けて、組織運営、融資基準、他の国際金融機関との関係等についての検討がスタートする。日本も参加要請を受けているが、態度を留保している。
 これほど多くのアジア諸国がAIIBの設立を支持した背景にはアジア経済の成長に伴うインフラ建設資金需要の拡大に既存の国際金融機関が応じられない事態に陥っているという事実がある。中国は当初、この資金需要に応えるために米国に対して、世界銀行(以下、世銀)やアジア開発銀行(以下、ADB)の出資額の拡大を求めたが、米国議会の反対にあって認められなかったと言われている。
 米国のアジア太平洋政策に精通し、米国政府に一定の影響力を有する有識者の間でも、米国議会が世銀やADBの出資枠拡大を認めない以上、AIIBの設立を容認し、IMF、世銀と協調して発展させていくべきであるとの主張がある。
 現時点では、米国政府は日本、韓国、豪州に対して、AIIBに参加しないよう求めているが、今後の中国の対応によっては米国政府自身が将来その方針を変える可能性がある。今はまだAIIBの組織や運営方針が不透明で判断できないうえ、IMF・世銀体制にチャレンジする性格が懸念されることから、支持できない。しかし、中国が米国に対して協調的な姿勢を示した場合、米国がこれを容認する可能性は十分あると見られている。
 もし第1陣での早期参加を求められている日本が現在の米国の意向に忠実に従い、不参加方針を貫く一方、中国が既存の国際金融秩序と協調して運営することを決め、米国や欧州主要国が第2陣での参加を表明したらどうなるだろうか。AIIBでの日本の発言力は決定的に低下し、アジアでの信頼も大きく傷つく。インフラ関連ビジネスに大きな期待をかけている多くの日本企業の立場が圧倒的に不利になるのは明らかだ。すでに多くのアジア諸国がAIIBへの参加を表明している以上、日本が参加しないのはリスクが大きすぎるのである。
 日本にとってアジアは国益を決定的に左右する、最重要地域である。米国との関係はもちろん重要であるが、この問題については、アジア太平洋戦略上の日本の国益を軸に、最悪のリスクを回避し、次善の策を考えるべきである。
 中国もAIIBの国際的信用を確保するため、国際機関における実績の積み重ねにより国際社会で信頼されている日本の早期参加を重視している。他のアジア諸国も、アジアの中で中国に対して対等にものが言える唯一の国である日本が参加し、自分たちの意見を代弁することを期待しているはずである。逆に日本が参加を見送れば、アジア諸国が日本に失望することを覚悟しなければならない。
 こうした状況を考えれば、日本が早期に参加して、中核メンバー国として、AIIBの組織内部から、日本として容認できるような組織体制や運営方針を構築することは十分可能であるように思われるし、またそうすべきである。それは米国の理解も得られるはずである。
 米国自身、オバマ政権の下でアジア重視を表明しながら、財政難により十分な政策を展開できていない。この状況において、アジア太平洋政策上の最も重要な同盟国である日本がアジアにおいて信頼と影響力を低下させることを米国が望むとは思えない。

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