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2014.11.26

「ヒト」をめぐる日中格差

電気新聞「グローバルアイ」2014年11月19日掲載

  • 栗原 潤
  • 研究主幹
    栗原 潤
  • [研究分野]
    米国情報・ネットワーク

 久方ぶりに実現した日中首脳会談に、ホッとしているのは筆者だけではあるまい。近代以降、東洋に強力な大国が初めて併存する状況の下で、我々は平和と繁栄をいかなる方法で確実なものにすべきか。指導者が示した賢明な方針を堅持するため、深化するグローバル化の中で我々は知恵を絞らなくてはならない。
ハーバード大学で教鞭を執る友人、ジェイ・ローゼンガード氏は、グローバル化の中での国家の役割に関し、ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ教授と共に新たな本を12月に発表する予定だ。来年年初、彼がキヤノングローバル戦略研究所(CIGS)で講演する際、グローバル時代の税制や研究助成制度に関し、厳密な議論を楽しみにしている。
 グローバル化に関する生産や貿易等の統計は、読者諸兄姉が既に目にしていると考え、今回は「ヒト」のグローバル化を論じてみたい。なぜなら、近年訪中した際、中国に滞在する多くの外国人と議論し、日中両国共にグローバル化の大波を受けていることを体感しているからだ。例えば北京や上海での会合に出席すると、外国人参加者の急増を痛感し、同時に彼等の堪能な中国語にも驚いている。そこで研究・教育機関に関する日中両国の統計に簡単に触れてみる。日本側(JASSO)の資料によれば、日本に滞在する昨年の留学生数は約14万人。他方、中国側(CAFSA)の資料によると昨年の留学生数は約37万人。集計方法の違いに十分留意すべきだが、留学生数は日本で伸び悩む一方、中国では順調に伸びており、その差は更に開きつつある。
 出身国別の留学生数(一昨年の統計)をみると、日本における上位10ヵ国は、中国を筆頭に、韓国、台湾、ベトナム、ネパール、マレーシア、インドネシア、タイ、米国、そしてミヤンマーが続く。一方、中国における上位10ヵ国は、韓国を筆頭に、第2位が米国、第3位が日本、更にはタイ、ロシア、インドネシア、ベトナム、インド、パキスタン、そしてカザフスタンが続き、地域分布に若干の差が存在する。
 留学生数を出身国別に比較すると、韓国は、中国へ6万3千人、日本へ1万7千人を送り出している。またタイは中国へ1万7千人、日本へは2千人、ベトナムは対中1万3千人、対日4千人、インドネシアは中国へ1万3千人、日本へ2千人を送り出しており、アジア諸国における留学生数の「日中格差」は否定しがたい状況だ。この状況は欧米諸国においても同じである。留学生数の中・日比較は、米国が2万5千人対2千人、ドイツが6千人対6百人、そしてフランスが8千人対7百人となっている。
 こうした留学生、更には滞在する研究者・ビジネスマンに焦点を当てた内なるグローバル化の「日中格差」は、今後の日中関係を考える上で重要だ。欧米、更にはアジアの友人達と日中間の歴史問題や領土問題について議論すると、たいてい彼等は次のように応える--君の主張は理解出来るし、中国側の主張に誇張があることも分かる。でもね、ジュン。今は親しい友人の数は日本より中国の方がずっと多いんだよ、と。筆者は「でも友達は数ではなくて質でしょ」と反論するものの、不安感は払拭出来ないでいる。
 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)がついに正式に設立された。アジアの「カネ」の流れがいかなる形で今後変化するのか。またいかなる形で「ヒト」が「カネ」と影響し合うのか。将来を考える時、この「ヒト」における「日中格差」が気になって仕方がない。

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