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2014.08.21

経済発展の勢い続く中国内陸部

電気新聞「グローバルアイ」2014年8月20日掲載

  • 瀬口 清之
  • 研究主幹
    瀬口 清之
  • [研究分野]
    中国経済・日米中関係

 中国では石炭産業の不振や過剰設備の削減などの影響で地域経済が停滞し、不動産価格が下落している地方都市もあるが、そうした停滞とは無縁の地域も多い。その代表例が中西部の主要都市だ。筆者は4月から7月にかけて重慶、成都、武漢の3都市を訪問したが、いずれの都市も相変わらずの活気あふれる発展ぶりだった。都市化とインフラ建設が成長の原動力となり、市街地のいたる所にクレーンが林立し、1年前の街並みが思い出せないほどの経済発展の勢いが続いている。
 中国経済は30年以上続いた高度成長時代の終盤を迎えつつあるが、2020年頃までは6~7%程度の成長率を保つ可能性が高い。その成長力の源泉は内陸部を中心とする都市化とインフラ建設である。
 内陸部の成長をリードするのは中西部であり、その中核都市は武漢、重慶、成都、西安だ。内陸部は沿海部に比べて交通・産業インフラの建設が遅れていたことから、外資系企業にとって進出が難しかった。しかし、リーマンショック後に実施された巨額の景気刺激策の下で集中的にインフラ整備が進められ、急速な経済基盤の改善が実現した。09年末に武漢・広州間、10年末に武漢・上海間の高速鉄道が完成、重慶市両江新区の国家級開発プロジェクトも10年6月に始まった。
 このように内陸部の発展が本格化したのは10年以降であり、それとともに外資系企業の進出も目立ち始めた。その頃から日本企業が本腰を入れて内陸部への進出に取り組み始めていれば、今頃は多くの日本企業が大きなチャンスをつかんでいたはずである。しかし、10年に漁船衝突事件、12年には尖閣問題と、日本企業に中国リスクを強く意識させる事件が相次ぎ、大型投資に対する慎重姿勢が広がった。沿海部ではすでに多くの企業が進出しており、既存工場内で機械設備だけを設置すれば増産対応が可能だったため、そうした状況でも需要の増大に応じて投資拡大を決定できた。これに対し、既存工場のない内陸部への進出は新規の工場用地の手当て、新工場の建設という大型投資が必要であったため、中国リスクへの懸念が高まる状況下では投資拡大の意思決定に踏み切ることができる企業は少なかった。こうして日系企業の内陸部進出は外資系に比べて後れを取った。
 日本企業の間での慎重姿勢の広がりとともに、社長、役員クラスの中国出張の頻度も低下した。このため多くの企業の経営陣は、最近の内陸部の目覚ましい発展の実情やチャンスの大きさを知らない。中国現地駐在員は内陸部の重要性を十分理解し、本社に対して事業拡大を提案しているが、経営陣に関心がなければ、本社内で重要課題として真剣に検討されることはない。
 多くの日本企業が中国事業に積極的だった09~10年当時に比べ、現在の中国は経済規模が約2倍となり、日本企業の潜在的顧客数は3倍以上に増大した。それをリードしているのが内陸部である。世界中の一流企業が進出し競合する中国市場での敗北は世界市場での敗北を意味する。今後の勝敗は内陸部での成功にかかっている。
 多くの日本企業は出遅れたが、まだ挽回は可能である。今年は中国政府の政経分離の姿勢も明確になっており、日中関係が経済活動に与える影響も小さくなっている。中国事業を拡大したい経営者は内陸部の主要都市に足を運び、自分の目で発展の実態を確認し、成長の勢いを実感してほしい。経営トップの決断から内陸部での日本企業の巻き返しが始まる。

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