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2014.05.23

中国 空前の日本旅行ブーム到来

電気新聞「グローバルアイ」2014年5月21日掲載

  • 瀬口 清之
  • 研究主幹
    瀬口 清之
  • [研究分野]
    中国経済・日米中関係

 中国人の親友が教えてくれた話を紹介したい。彼とは北京で初めて出会ってから20年以上になる。彼と私の間にはひとつの約束がある。彼は中国で日本ファンを増やし、私は日本で中国ファンを増やす。そしていつの日か2人で力を合わせて日中の間に架け橋を創り、日本ファンの中国人、中国ファンの日本人に両サイドから渡ってもらうという約束である。今も2人はその夢の実現に向けて橋を架けている最中である。

 以下は4月中旬に上海で彼から聞いた話である。


 彼の自宅は北京の郊外にある。その隣に老夫婦が住んでいる。彼の自宅には日本人の友人が訪ねてくることが多い。以前、隣人の老夫婦のご主人が彼に対してこう言った。「あなたは中国人でありながら、こんなに日本人と親しく付き合ってどういうつもりなのか。」それに対して彼は反論しなかった。ただ、隣人が日本嫌いとわかり、それがずっと心の負担になっていた。

 今年の2月のある週末、突然、隣の老夫婦のご夫人が彼の家を訪ねてきた。そして彼に次のように切り出した。「私たちは間違っていた。あなたに謝らなければならない」

 彼がその理由を尋ねると、ご夫人は次のように語った。

 老夫婦は今年の春節(旧正月)休み(1月末~2月初旬)に娘と共に日本に旅行した。ある日、喫茶店でお茶を飲んだ後、娘とご夫人は買い物に行った。ご主人は歩行が不自由なため、30分だけ喫茶店で待つことになった。娘は喫茶店の店員に対して、ご主人にお湯だけ出してほしいと伝えてご夫人と買い物に向かった。30分後、2人が喫茶店に戻ると、ご主人が同じ席に座ったまま、涙を流していた。娘とご夫人は店員がご主人に対して何か不愉快なことをしたと思い、クレームをつけようとした。その時、ご主人が2人を制した。「そうではない。30分間待っている間、この人はとても親切にしてくれた。今までの人生で娘に一度もしてもらったことがないほど親切なもてなしを受けて感動し、涙が止まらなくなっただけだ」

 老夫婦が日本から戻った後、ご夫人が彼を訪ねてこの話を伝えたという顛末である。


 中国人が初めて日本に旅行して日本人の優しさ、温かい心遣い、礼儀正しさに触れ、それまでの日本に対する不信感が一変したという話は多い。日本政府が中国人に対していくら日中友好を訴えても中国人の心は動かないが、旅行中の直接体験は圧倒的なインパクトを与える。

 実はいま、中国では日本旅行ブームである。多くの中国人が日本に来て、直接日本人と触れ合い、また日本に来たいと思って帰る。今年の1~3月中の上海総領事館の日本滞在ビザ発給件数は前年比約3倍に達した。昨年7月、タイ国民に対して日本への短期滞在ビザ免除を開始したところ、タイから日本への旅行者は前年比7割増となった。

 現在、中国国民にはビザが免除されていない。それでもこの急増ぶりである。昨年日本を訪問した中国人旅行者は131万人だった。今の日本旅行ブームが続けば、すぐに300~400万人に達する勢いである。そこにビザ免除が加われば、2020年までに1000万人を超える可能性は十分ある。それほど多くの中国人が日本人と直接接し、日本に対して好印象を抱けば、中国人全体の対日感情にも大きな変化が生まれるはずである。今こそこの強力な日中関係改善策を有効活用すべき時である。わが親友と創る架け橋を渡ってくれる中国人が手軽に橋を渡れる日が来ることを期待したい。


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