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2013.07.26

中国のシャドーバンキングの行方

電気新聞に掲載(2013年7月24日付)

  • 瀬口 清之
  • 研究主幹
    瀬口 清之
  • [研究分野]
    中国経済・日米中関係

 シャドーバンキングとは銀行の預金・貸出、社債・株式以外の手段で資金を融通する方法である。一部には地下金融と呼ばれる不透明な仕組みも含まれるが、ウェイトは小さい。その主要部分の仕組みを簡単に説明すると、信託と呼ばれる組織を経由して金融商品である「理財商品」を販売し、個人や企業から資金を集め、その資金を企業や政府関係機関等に融通する方式である。「理財商品」は、金融当局が定める規制金利の上限より高い金利を設定できるため、金融自由化商品の先駆けとも言える。
 このシャドーバンキングが不良債権の温床となり、それによって形成されたバブルが近い将来崩壊し、中国経済がハードランディングに向かうという見方が広く共有されている。しかし、私はいくつかの理由から当面そのリスクは小さいと見ている。

 第一に、現在の中国のマクロ経済情勢が安定していることである。先日公表された第2四半期の実質成長率は前年比7.5%と、2四半期続けて成長率が低下した。しかし、主要経済指標を見ると、輸出が大きく低下したが、投資は小幅の下落に留まり、消費は堅調を維持。中国政府が最も重視する雇用と物価も良好な水準で安定を保っている。しかも、足許のマクロ経済政策は中立的であり、仮に先行き景気下振れのリスクが高まれば、いつでも政策発動によって下支えすることが可能である。こうした状況から見て、現在の中国のマクロ経済は非常に安定しており、この状態がすぐに崩れる可能性は低い。
 第二に、当面は資産バブルが崩壊して不良債権問題が深刻化するリスクが小さいことである。バブル経済の火種は不動産と株式である。中国各地の不動産価格を見ると、今年の上半期に前年比22%と比較的高い上昇率を示した上海を除き、沿海部で10%前後、内陸部は10%以下の上昇率にとどまっている。名目成長率では現在も10%前後の成長率が続いている中国では、この程度の不動産価格の上昇は正常の範囲内であり、極端なバブルが形成されている可能性は殆どない。足許の株価も上海総合指数が2000前後で推移しており、2007年10月に6000を超えた時の3分の1程度である。こうした状況から見て、当面はバブルが崩壊して中国経済が失速するリスクは小さいと考えられる。
 第三に、中央政府・金融当局が金融機関および地方政府の行動を厳しく監視していることである。中国政府は2008年9月のリーマンショックの直後にいわゆる「4兆元の経済刺激策」を実施し、急速な景気回復に成功した。しかし、そのなりふり構わぬ景気刺激策の副作用として巨額の不良債権を生んだ。2010年以降、金融当局はこれを厳しく監視し、昨年と今年が処理のピークとなっている。
 中国政府は日米欧諸国が経験したバブル経済崩壊の怖さをよく理解しており、目下、自分自身でも不良債権処理に取り組み中である。2000年代入り後の日本の銀行行動を振り返っても、不良債権処理の最中にはサブプライムバブルに手を出しにくかった。加えて、中国政府内部において巨額の不良債権を生んだ超金融緩和政策に対する批判は今も根強い。こうした政府の厳しい監視が続く状況下で、中国の大手・中堅クラスの金融機関が不良債権に手を出して経営破綻に追い込まれることは考えにくい。

 以上の要素を考慮すれば、当面、シャドーバンキングが金融危機を引き起こし、経済のハードランディングを招く可能性は低いと見るべきである。


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