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2012.12.04

「東京=ケンブリッジ・ガゼット:グローバル戦略編」第44号(2012年12月)

小誌は大量の資料を網羅的かつ詳細に報告するものではない。ハーバードにいる一研究者である筆者が接した情報や文献を①マクロ経済、②資源・エネルギー、環境、③外交・安全保障の分野に関し整理したものである。紙面や時間の制約に加えて筆者の限られた能力という問題は有るが、小誌が少しでも役立つことを心から願っている。

  • 栗原 潤
  • 研究主幹
    栗原 潤
  • [研究分野]
    米国情報・ネットワーク

 米国大統領選は接戦という予想に反してオバマ大統領が圧勝した。選挙予想は、経済や地震等の予測と同様、警戒して聞くものの1つだが、投票直前の5日、英紙Financial Timesのコラムニスト、ギデオン・ラクマン氏がロムニー氏を"cold fish"と皮肉ったのを知り、「"冷徹な英国人"にさえ"cold fish"と映るようでは、ロムニー氏の勝利はない」と直感した("cold fish"は、シェイクスピアのThe Winter's Taleの中の台詞で、「冷酷な人間」の意)。また米大統領選を通じ筆者は、①言葉と②行動そして③運が、何事においても大切であると感じた次第だ--言葉だけでは"ほら吹き"と言われかねず、行動だけが先走れば"説明不足"と非難されかねず、そして、たとえ言動に秀でていても、運に恵まれなければ成功は望めない。
 小誌前号で触れたストックホルム出張は、『消えたヤルタ密約緊急電: 情報士官・小野寺信の孤独な戦い』の読了後であったが故に、感慨深いものとなった(岡部伸著 新潮社 2012年8月)。同書は、1945年2月のヤルタ会談で結ばれた"ソ連参戦の密約"に関し、東京の参謀本部に向け緊急打電したストックホルム駐在の小野寺少将の孤軍奮闘をあつかった秀作だ。日本の戦史--『戦史叢書』や『機密戦争日誌』等--に記されていないこの史実を、著者の岡部氏が海外の資料を丹念に調べられている。言動共に優れた帝国陸軍の情報将校が打電した機密情報には、不運にも東京側に世界情勢を冷徹に判断出来る受信者がいなかった。その悲劇的な結末として、"引き揚げ者の苦難"と"北方領土問題"を敗戦後に長く残した、と言えまいか。
 さてストックホルムでは、スウェーデン・アカデミーが所有し、ノーベル文学賞を検討するという場所(Den Gyldene Freden)に招かれ、知的刺激に満ちた晩餐会を楽しんだ。人間は、思想や感情を整理し、また伝達するために言葉を生み出した。が、言葉を巧みに操れる人の数はどの言語であっても非常に限られる。我々は日本語という美しい言語を持っているが、それを巧みに操り、国民を奮い立たせ、我が日本を蘇(よみがえ)らせる指導者は何処にいるのか...(勿論、詭弁家を除く)。かくして異国スウェーデンの地で自戒の念を深め、低迷する祖国に直面し苦悶するなかで心に残る言葉を綴ったロシアの作家、ツルゲーネフを想い起していた--「祖国の運命を気遣い、痛ましい想いにくれる日々に、汝のみが我が心の杖、我が心の支え。嗚呼、偉大にして強く正しく、そして自由なロシア語よ! 汝無くして、祖国に起きる一切の出来事にどうして絶望せずにいられよう(Во дни сомнений, во дни тягостных раздумий о судьбах моей родины,--ты один мне поддержка и опора, о великий, могучий, правдивый и свободный русский язык! Не будь тебя--как не впасть в отчаяние при виде всего, что совершается дома?)」と。


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「東京=ケンブリッジ・ガゼット:グローバル戦略編」第44号(2012年12月)PDF:369.4 KB

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