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2010.12.10

上海で広がる「日本の食」ブーム

電気新聞「グローバルアイ」 2010年12月1日掲載

  • 瀬口 清之
  • 研究主幹
    瀬口 清之
  • [研究分野]
    中国経済・日米中関係

 上海浦東に今年7月にオープンしたIFCモールは目下上海で最大規模の一流ブランドショッピングモールである。その周辺は外資系メガバンク、高級ホテル等が集中する、中国で最もグレードの高い超高層オフィスビル街である。IFCモールは上海で働くビジネスマンの注目を集めるおしゃれなスポットのひとつであり、中国の最新のトレンドを反映している。

 11月初旬、IFCモールの地下1階のレストラン街にはいくつかのレストランがオープンしていた。ランチタイムでもあまり混雑していなかったが、その中で1軒の店の前だけに10〜20名の行列ができていた。その行列の原因は日本のラーメン屋だった。中国人の間でも日本のラーメンは人気が高い。そのレストラン街の奥にはスーパーマーケットがある。香港資本だが、経営者は日本人だ。中をのぞいてみて驚いた。日本国内の高級スーパーに入ったかと錯覚するほど日本の食材が豊富である。カレーやシチューのルー、豆腐、海苔、各種調味料など日本で売っているのと全く同じである。さらに驚いたのは日本酒と焼酎の豊富な品揃えだった。それぞれ20〜30種類ずつあり、しかもその銘柄が厳選されている。そのスーパーの入口付近には、たこ焼き、日本のカレー、たい焼きの出店が並び、和菓子や日本のクッキーの店まであった。

 IFCモール最上階の4階にたどりつくと、そこにも日本の食があった。まず目を見張ったのは日本の有名なワインショップ「エノテカ」があったことである。この店が扱うワインは日本のワインではなく世界のワインである。つまり日本人の嗜好に合わせてワインを選んでいる店である。その隣には銀座でいくつかの系列店を展開するイタリアン「イゾラ」があった。カジュアルながらちょっと高級なイタリアンである。ピザがおいしく、味や雰囲気にうるさいOLからも大人気のレストランだ。こんなおしゃれな店まで上海に来たのかと店の前で驚いていると、店員に「中へどうぞ」と招き入れられた。店の中に入ってみると、ガラス張りの明るい部屋に白いクロスのかけられたテーブルが間隔をおいて整然と並ぶ素敵な内装が目に飛び込んできた。代官山か西麻布のレストランに来た気分だ。「イゾラ」の隣にはそのフロア唯一の中華料理である上海料理店がある。上海人のリッチな経営者に話を聞くと、今上海のビジネスマンが招待されて一番嬉しいと感じる中華料理店だそうである。

 このIFCモールには世界の一流ブランドが集中している。その中で食文化の最高峰に日本の食が位置づけられている。それが高級中華料理店のブランド価値をも向上させると考えられているのである。前出の上海人経営者にIFCモールで日本の食が目立つ理由を聞くと次のような答えがすぐに返ってきた。「上海ではいま、日本の食が一番おしゃれだと思われているからだよ。」

 上海は08年に1人当たりGDPが1万ドルに達した。同じ年に広州が、昨年北京が1万ドルクラブに入った。今年は天津、来年は内陸部の武漢等も1万ドルに達する見込みだ。中国では平均所得が1万ドルに達するとその地域の消費者行動がぜいたく化すると言われている。以前、日本の製品・サービスは品質はいいが価格が高過ぎると言われていた。しかし、今や日本の製品・サービスを日常的に購入する中間層が年々拡大している。中国国内市場において日本企業にとってのチャンス拡大はこれからである。

【2010年12月1日 電気新聞「グローバルアイ」に掲載】

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