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2010.09.16

変化する中国ビジネスへの対応(2)-優秀な若手人材の育成が収益確保のカギ-

  • 瀬口 清之
  • 研究主幹
    瀬口 清之
  • [研究分野]
    中国経済・日米中関係

 このような数量・価格両面の変化を捉えて中国で業績を伸ばしている日本企業は多い。ただ、総じて 中国ビジネスは利益を上げることが難しいと言われている。その背景には中国独特の制度、商習慣を理解して的確に対応することの難しさがある。たとえば、税 金、負担金、規制等に関する地方政府との交渉方法、資金決済リスク、知的財産権流出リスク、契約締結時には契約内容を故意に曖昧にしておいて、後で中国側 に有利な解釈をされるリスクなど、普通の日本人ビジネスマンでは的確な対処方法がわからない問題が多い。そうした様々な中国市場独特のハードルを1つ1つ 越えるうちに必要なコストが嵩み、利益を確保するのが難しくなっていくのが一般的である。

 しかし、そうした困難にも対処方法はある。的確な対処方法を様々なケースに合わせて考えだし、実践するのがビジネスリーダーの役割である。そうしたビジネスリーダーを確保するには以下の2つの方法が考えられる。

 第1に、実務能力の高い、信頼できる中国人の協力を得ることである。優秀な中国人ビジ ネスマンは中国市場での利益確保のための要点をよく理解している。ただ、そうした人材を確保するには処遇面、権限委譲面等で折り合いをつけるのが容易でな いのも事実である。また、中国で生じる様々な問題にはしばしば中国流の有効な対処方法があるが、それが日本企業の厳格なコンプライアンス基準に適合しない ケースもある。その場合には、有能な中国人ビジネスマンが有効な対処方法を提案しても、それを実行することができないという問題が生じる。中国で多くのラ イバル企業が活用している有効な手段を用いることが難しい日本企業の制約は大きい。

 第2に、中国市場でも中国人ビジネスマンと互角に渡り合える優秀な日本人ビジネスリー ダーを育成することである。それには一定水準以上の中国語能力を習得させ、中国の現地で少なくとも数年以上、プロジェクトの責任者として実務経験を積ませ て、様々な修羅場を克服する能力を身に付けさせることが必要である。言語、文化、商習慣等が大きく異なるだけでなく、世界中の一流企業が凌ぎを削る激烈な 競争が繰り広げられている中国市場でのビジネス展開は容易なことではない。しかし、その困難を克服する能力を身につけなければ優秀な中国人ビジネスマンと 互角に渡り合うことはできない。「逆境は人間を鍛える溶鉱炉である」(中国古典「菜根潭」)。前述のコンプライアンス基準の制約の問題に直面したケースに おいても、優秀な日本人ビジネスリーダーであれば、日中両国の複雑な事情を踏まえた上で、的確な対処方法を見出すことができる可能性がより高いかもしれな い。もちろん優秀な中国人ビジネスマンと日本人ビジネスマンの両方がしっかりと手を組むことができればベストであることは言うまでもない。

 中国ビジネスを成功に導く人材の確保は容易ではないが、悲観材料ばかりでもない。日本 人と中国人をともに部下に持つ、ある優秀な中国人経営者は、つい最近私にこう語った。「中国人と日本人の20代の若者同士を競わせると日本人の若者の方が 平均的に優秀だと思う。中国人の若者は指示された内容をこなすだけの人材が多いが、中国に来ている日本人の若者は自分で先のシナリオを描いて自発的、積極 的に動く。」これが全ての企業に当てはまるとは思えないが、この発言は日本人の若者にも大きな可能性があることを示している。日本は国土が小さく、資源も 乏しい。豊富なのは優秀な人材だけでここまで経済社会を発展させてきた国である。日本企業の中国ビジネスの将来に向けて、ひとつの重要なカギを握るのは中 国人ビジネスマンと互角に渡り合える優秀な若手人材の育成にあることは間違いない。

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