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2018.10.05

都道府県別診療報酬は医療制度の効率・公正性向上のために不可避

CLINIC BAMBOO 2018年10月号掲載

  • 松山 幸弘
  • 研究主幹
    松山 幸弘
  • [研究分野]
    財政・社会保障

 これまで市町村別に分かれていた国民健康保険者が2018年4月から都道府県に集約された。これを踏まえて奈良県が、県内の国保保険料を24年度までに統一すること、医療費の適正化が計画どおり進まなかった場合、他の都道府県の診療報酬より低くする方針を明らかにした。これを受けて、都道府県別診療報酬をめぐる議論が活発になっている。

 私は、17年に出版した『財政破綻に備える次なる医療介護福祉改革』(日本医療企画)で、都道府県別診療報酬導入はわが国の国民皆保険維持のためには不可避であると説いた。医療制度を全国民で支え合うためには、都道府県の自助努力で解決が困難な要素について国が財源調整するのは当然である。具体的には年齢構成、所得水準、医療費が高額となる疾病患者数などによる差だ。

 しかし、都道府県固有の原因による超過医療費については当該都道府県が責任を持つべきである。超過医療費の財源まで国が補てんすることは、超過医療費を発生させていない都道府県に回るはずの財源を奪うことになるからだ。現行制度は、1人当たり医療費が全国平均より低い都道府県に超過医療費を実質的に負担させる仕組みだったのである。

 都道府県別診療報酬にしないと、医療を過剰消費している都道府県は、その財源として保険料を引き上げて住民に負担させることになる。しかし、超過医療費の原因は、住民の受診行動とは別に医療機関が過剰投資の元をとるため過剰診療を行っているという事情がある。したがって、住民が超過医療費の財源を保険料引き上げで全額引き受けることに納得するとは思われない。

 都道府県別診療報酬にはのように2つの選択肢がある。奈良県が提示した案は選択肢①である。診療報酬を引き下げられたA県の医療機関は、周辺都道府県から患者流入があれば引き下げの影響を相殺できる可能性がある。その結果、周辺都道府県も診療報酬引き下げを余儀なくされるスパイラル現象が起こるのではないかと、医療団体が強く反発している。周辺都道府県からの患者には、標準診療報酬を適用する選択肢②であれば、周辺都道府県からの患者流入は起きない。一方で、A県の民間医療機関が県外に流出するリスクが高まる。都道府県別診療報酬導入の狙いは過剰投資の是正であるから、ある程度の医療機関数減少はやむを得ない。しかし、わが国の医療過剰投資の元凶は補助金で重複投資を繰り返してきた公立病院にもあるのであり、過剰投資是正の負担を民間医療機関にだけシワ寄せしない配慮が必要である。


表 都道府県別診療報酬の選択肢
A県=診療報酬を他の都道府県より低き下げた県
B県=診療報酬が全国の標準と同じ
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                                                                        出所:筆者作成

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