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2018.06.01

給付と負担のバランスを国民が選べる仕組みが必要

CLINIC BAMBOO 2018年6月号掲載

  • 松山 幸弘
  • 研究主幹
    松山 幸弘
  • [研究分野]
    財政・社会保障

 本年4月25日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会で、75歳以上高齢者の患者負担割合を原則1割から2割に引き上げることが改めて審議されたことから、新聞紙上などでこの問題が取り上げられている。

 これに対する筆者の考えは、昨年出版した『財政破綻に備える次なる医療介護福祉改革』(日本医療企画)で述べたとおり、2割ではなく3割に引き上げ、年齢による患者負担割合の格差をなくす、かつ患者負担のあり方を国民一人ひとり選ばせるべき――である。なぜなら、財政破綻回避のために医療保険改革を急がねばならないときに国会で審議するのは時間の浪費であり、現在の患者負担割合原則1割を標準プランとしたうえで、3割負担を受け入れる人にはその分保険料が安いという選択肢を与えることにすれば、改革をスピードアップできるからである。

 また、これまでの社会保障制度改革の経験から、仮に患者負担割合を引き上げる法改正を実現できたとしても、選挙が近いという理由で政治家たちが法律の施行を遅らせるという改革の形骸化が懸念される。しかし、国民に選択させる仕組みであれば、その心配もない。

 表のとおり、他国では公的医療保険の枠組みのなかに、国民が給付と負担のバランスを選択できる部分を組み込んでいる。そのメリットは、制度設計の前提条件であった人口動態、疾病構造、経済、財政、医療技術が大きく変わり改革が必要となったときに、オプション部分の変更を緩衝材にすることで改革に対する国民の理解が得やすいということにある。

 たとえば終末期医療の受診行動は、患者やその家族の価値観によっても大きく左右される時代になった。そこで、国民が一定年齢に達した時点で終末期医療に対する給付内容と保険料のバランスを選んでもらうのである。また、外来受診時定額負担が論点になっているが、定額負担の有無で保険料に差をつけ国民に選んでもらうことも検討に値する。この方法は、新規高価な医薬品、医療機器の保険適用開始時にも使える。

 国民一人ひとりに保険の選択権を与えることで、健康管理へのインセンティブと医療への満足度を高めるのである。


表 公的医療保険の枠組みのなかにオプションを入れた諸外国の例
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