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2017.12.06

経済史から見た「働き方改革」

共同通信より配信

 政府は6月9日の閣議で経済財政政策の基本となる「骨太の方針」を決定した。一つの柱は「働き方改革」であり、その一環として雇用先から離れた場所で働く「テレワーク」が強調されている。

 過去を振り返ると、人々が会社や工場に集まって働くという様式は歴史上のある時期以降に普及したものである。すなわち、イギリスで18世紀末に始まり、他国に波及した産業革命の過程で、人々が工場に集まって作業をすることが一般的となった。それ以前は、職人たちが各人の家の作業場で働いたり、問屋が労働者に作業と原料を割り当てて、労働者は各人の家で作業をする、「問屋制家内工業」が広く行われていた。

 問屋制家内工業は、特に農家の女性労働力を工業生産に利用するうえで有効であった。農業労働には季節によって繁閑があり、自分の家での作業が可能な仕組みを作ることで、部分的な余剰労働力を活用することができたためである。

 工業生産の主流が問屋制家内工業から工場に移行した理由について、ノースウェスタン大学のジョエル・モキアは、労働者の移動コストと情報の移動コストの相対的な大きさが変化したことを強調している。産業革命に伴う技術変化が作業に必要な情報の質と量を大きくし、それを分散している労働者に伝えるコストが上昇したため、労働者を工場に集中するメリットが大きくなったという説明である。

 今日の日本でテレワークが強調される基本的な理由は高齢化に伴う労働力不足であり、フルタイムでは働きにくい特に女性の労働力を利用する必要があることであり、その点で問屋制家内工業の条件と共通している。そしてそれが新しい働き方として成功するかどうかは、管理者と分散した労働者たちの間の情報伝達が効率的に行われるかどうかにかかっている。

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