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2014.10.14

非営利ホールディングカンパニー型法人制度導入は何をもたらすか

医療白書2014-2015年版 に掲載

  • 松山 幸弘
  • 研究主幹
    松山 幸弘
  • [研究分野]
    財政・社会保障

 2014年6月に公表された日本再興戦略改訂版に「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の創設」が明記された。厚生労働省検討会がその具体策を審議している。しかし、非営利ホールディングカンパニーに対する誤解から議論に混乱が見られる。そこで、提唱者である筆者からその正しい理解を解説する。



1.はじめに

 筆者は、2005年に出版した「医療改革と統合ヘルスケアネットワーク」(共著者:河野圭子、東洋経済新報社刊)で非営利ホールディングカンパニー型法人(以下非営利HC型法人と略す)の創設を提唱した。続いて2010年の「医療改革と経済成長」(日本医療企画刊)で諸外国の医療改革に言及しつつそれをより詳しく論じた。筆者が非営利HC型法人創設を提唱する契機になったのは、米国経済最大産業であるヘルスケア(2012年の医療介護費2.8兆ドル≒280兆円、GDP比17.9%)の現場改革に取り組んでいる医療経営者たちから、「日本は医療以外ではトヨタ、キヤノン、ソニーなど世界をリードする企業を輩出しているのに、世界第2位の医療市場を持ちながら世界ブランドの医療事業体が誕生していないのは何故か?」と繰り返し質問されたことにある。(なお、以下では特に断らない限り医療という用語は介護も含む広い概念<ヘルスケア>とする)。

 地域包括ケアの構築が先進諸国の医療改革で共通目標になっている。わが国では地域包括ケアの仕組みを人口1万人単位で作ることが掲げられているが、欧米諸国では人口数十万人~数百万人の広域を地域包括ケア制度設計上の標準にしている。欧米諸国の地域包括ケアのキーワードは"連携"ではなく"統合(Integration)"である。つまり、地域住民が必要とする医療サービスを可能な限り品揃えして提供する事業体を作ることである。その事業体を米国ではIntegrated Healthcare Network(以下IHNと略す)と呼んでおり、民間非営利病院を核にしたIHNと公立病院を核にしたIHNが存在する。米国以外のオーストラリア、カナダなど医療制度が公中心の国々では公立病院を核にIHNを組成している。非営利HC型法人とは、このIHNに非営利子会社と株式子会社をぶらさげることを認めたものであり、米国の民間非営利病院を核にしたIHNに見られる組織構造である。

 わが国で非営利HC型法人を政策テーマとして議論したのは、2013年8月2日に開催された第19回社会保障制度改革国民会議が最初である。それを産業競争力会議がアベノミクス成長戦略の具体策の1つとして支持した結果、厚生労働省が「医療法人の事業展開等に関する検討会(以下厚労省検討会と略す)」を設置し同年11月に審議開始した。そして、2014年1月の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)で安倍総理が非営利HC型法人の仕組みを使って米国のメイヨークリニックに伍する大規模医療事業体を創ることを宣言したことから、日本再興戦略改訂版に盛り込まれるに至った。

 しかしながら、検討会事務局である厚生労働省が持分あり医療法人と持分のない社会福祉法人を束ねる形を非営利HC型法人のモデルとしたため審議が紛糾している。その結果、医療経営者、マスコミの方々から様々な質問が筆者に寄せられている。その質問内容は、4月2日に開催された第4回厚生労働省検討会議事録に網羅されている。そこで、同議事録に掲載された委員からの指摘、厚生労働省の回答を論評する形で私見を述べることとする。・・・


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