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2013.11.06

「減反廃止」こそ農業立国への第一歩

一般社団法人 日本経営協会「OMNI-MANAGEMENT」 2013年11月号に掲載

◆誤った農業観

 農業については、次のような"常識"や"通念"がある。「規模の大きい農家は、化学肥料や農薬などをたくさん使う近代的な農業を行っているのに対し、貧しくて小さい農家は環境にやさしい農業を行っている」「日本の農業は、土地が少なく、農家の規模も小さいので、米国や豪州の農業とは競争できない」

 これに、農業界や一部の知識人たちは、「だから、農業、特に小農は保護しなければならない。規模拡大による農業の効率化などとんでもない。TPP参加など論外だ」と続ける。

 しかし、今の日本に貧しい小農などいない。小さな農家は勤労者世帯を上回る所得を稼ぐサラリーマン兼業農家である。農業所得に依存していないので、規模拡大など農業に真剣に取り組む必要はない。だから、農業の規模が小さいのだ。小さいから貧しいのではない。

 規模が小さい兼業農家は週末にしか農業ができない。農業に多くの時間をかけられないので、雑草が生えると農薬で処理してしまう。1ヘクタール未満の平均的な米農家では環境保全型農業の取り組みは2割もいないのに、10ヘクタール以上だと5割を超える(2000年)。米、野菜、果樹、畜産などを組み合わせる複合経営は、家畜糞尿や植物残渣を堆肥化して化学肥料を節約でき、病害虫発生を防止して農薬を節約できる。しかし、これは片手間ではできない。

 規模については、農家一戸当たりの農地面積は、日本を1とすると、EU6、米国75、豪州1309である。規模が大きい方がコストは低い。しかし、規模だけが重要なのではない。世界最大の農産物輸出国である米国も豪州の17分の1に過ぎない。土地の肥沃度が異なると、作物も農地面積あたりの収量(単収)も違う。土地が痩せている豪州では主に草地で牛を放牧しているのに対し、米国はトウモロコシ生産が主体である。また、豪州の小麦の単収は英国の5分の1にすぎない。英国の1ヘクタールは豪州の5ヘクタールに相当するということである。

 競争力という場合、コストと同時に品質も重要である。自動車にベンツのような高級車と低価格の軽自動車があるように、同じ農産物の中でも品質格差は大きい。日本米の国際市場での評価は高い。香港では、同じコシヒカリでも、日本産はカリフォルニア産の1.6倍、中国産の2.5倍の価格となっている。軽自動車に比べ、ベンツのような高級車がコストも価格も高いのは当然である。世界で貿易される米のほとんどは、アフリカ、南アジアなどの低所得国向けである。800万トンある日本産に、品質面で対抗できるのは、世界貿易量の1%、30万トンに過ぎないといわれる。・・・


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「減反廃止」こそ農業立国への第一歩PDF:2.5 MB

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