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2013.10.24

「日本版医療技術評価(HTA)」について-第1回 背景と論点-

医療経済研究機構 Monthly IHEP 2013 10月号No.224 に掲載

はじめに

 半世紀前に国民皆保険を樹立した日本は、世界の中の優等生とされる医療を実現してきた。しかし、世界経済の不安定化や止まらない医療費増大のなかで、果たして日本が現在の国民皆保険制度を持続できるのかという懸念が生じている。同様な問題は世界の各国でも起こっている。すなわち、医療が各国個別の問題に過ぎないと考えられていた時代は終焉し、医療もいわゆるグローバリゼーションの下で多くの国が共通の問題に直面するようになった。

 そのひとつが、北米や欧州はもとより、アジアや南米に至るまでの広汎な世界各国において急速に拡大してきた医療技術評価(Health Technology Assessment; HTA)の問題である。このHTAの概念は、医療技術評価機関国際ネットワーク(International Network of Agencies for Health Technology Assessment; INAHTA)によれば、「医療技術の開発、普及、および使用により生じる医学的、経済的、社会的、かつ倫理的意義を分析する学際的な政策研究分野である」と定義される[1]。しかし、狭義には、医療経済学的視点に立って医薬品や医療機器の許認可や価格決定を行い、国民に公正な医療を実現することを目的する公共政策の新しいアプローチとして認識されている。

 そのような政策は1990年代初頭、カナダ、オーストラリア両国による医薬品償還への経済評価の必須化に始まり、1999年の英国国立医療技術評価機構(NICE)の創立を経て、またたくまにヨーロッパ各国に波及した。さらに、このNICEの影響は、アジアにも飛び火し、2008年1月、アジアで初めて韓国政府が医薬品の償還決定へのHTAの導入に踏み切り、台湾、タイ、マレーシア、中国などが同様な方向へ動き出しアジアのリーダーシップを競い合うに至っている。

 このような情勢の下、我が国では医療のグローバリゼーションの新たな潮流に対応する政府の戦略が必ずしも見えず、国際的な孤立の懸念すら生じていた。そこで厚生労働省も、日本でも新たなHTAへの取り組みが必要であることを認識し、2012年度より中医協での費用対効果評価検討部会を立ち上げた。この部会では費用対効果の評価の観点からHTA問題への検討を始めている。そのため、いわゆる「日本版」HTAなるものがどのような形で導入されるのか、部会の動向に我が国の内外から注目が集まっている。そこで小稿では、日本版医療技術評価を語るに際しての問題を3回シリーズで考える。第1回は日本版HTAの背景と論点を明らかにする。・・・


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<医療経済研究機構より許可を得てMonthly IHEP 2013 10月号No.224より転載。同機構への許可なく無断で記事転載を禁じる。>

「日本版医療技術評価(HTA)」について-第1回 背景と論点-PDF:3.1 MB

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