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2013.05.16

柏木恵インタビュー「3段階で財政を健全化―北海道赤平市の財政再建への取り組み―」

  • 柏木 恵
  • 主任研究員
    柏木 恵
  • [研究分野]
    財政・社会保障

 柏木主任研究員は、『地方財務』2013年3月号で、「3段階で財政を健全化―北海道赤平市の財政再建への取り組み―」を発表した。2007年に夕張市が財政再建団体に認定された当時、これと並んで財政再建団体になるのではないかと言われていた赤平市が2009年度には大幅な改善を成し遂げた。この論文は、赤平市の再生への取組みを調査・分析したものである。その内容についてインタビューした。

論文全文は、こちらからご覧ください。



【聞き手】今回の論文では、夕張市と並んで破綻するのではないかと言われていた赤平市の財政再建を取扱っていますが、赤平市の再生が成功した最も重要なポイントは何だったのでしょうか?


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【柏木】夕張市とは条件が違うので単純に比較はできませんが、赤平市のみに焦点をあてると、財政問題の大きな部分は市立病院の赤字でした。赤平市の一般会計の財政規模約80億円に対して、病院会計の赤字は平成19(2007)年度で約29億円ありました。これに対して、一般会計から病院会計に平成19~23年度の合計で約18億円を繰り入れました。また、ちょうど総務省が時限措置で公立病院特例債の発行を認めたことで、この29億円の不良債務を解消することができました。これが再生の最も重要なポイントだと思います。


【聞き手】赤平市が財政的に持続可能な状態に再建できたと言えるのでしょうか?あるいは一時的に息を継いだというに過ぎないのでしょうか?


【柏木】今後も安泰という状況ではありません。赤平市の一般会計の財政規模約80億円に対して、自主財源(市税収入など)は10億円弱で、国からの地方交付税が一般会計の約5割に当たる44億円あります。つまり赤平市の財政は、国の財政に依存し、それに影響されるということです。
 赤平市が財政再建を真剣に考え始めたきっかけは、計画した市町村合併が白紙になった(2004年)こともありますが、それ以上に、三位一体改革の頃(2004年以降)に地方交付税が毎年1億円ずつ削減されたことでした。80億円規模の財政に対して交付税が1億円ずつ減っていく状況は、赤平市にとって大変な脅威だったのです。これに対する対策は、資産売却などを除けば、基本的には、行政の経費削減と市民の負担増しかありません。赤平市は、自主再建の道を確保するために、自らその手段を選んで進めたのです。
 赤平市に限らず、小規模自治体は国からの交付税交付金に影響されます。赤平市を含めて小規模自治体の、国の財政再建の成否による緊張感はこれからも続きます。


【聞き手】思い切った人件費削減などの中でどのような勢力がどのように抵抗し、それをどのように排除したのでしょうか?


【柏木】 早期退職については、職員組合の抵抗は普通にあった(想定どおり)と聞いていますが、大きな抵抗勢力は生まれなかったようです。職員全員を集めた説明会で市長や財政課長が説明し、職員組合との話合いが行われて、職員が受入れていきました。
 当時、夕張市が破綻し、毎日のようにメディアで夕張の状況が流れていました。赤平市も「財政再建団体」になったら同じようになってしまう。つまり、国が介入し、国の指導の下で、当然人員削減・人件費カットなどの措置が取られると危惧されました。そうであるならば、「再建団体」になることを避け、自分たちで自主的に再生を進めていく方がいいのではないかと職員たちが考えたことが大きかったといえます。
 職員の人件費カットについても、夕張市の30年計画に対して、赤平市の計画は6~7年でした。一時的な削減であり、しばらく辛抱すればいずれ元に戻るということが見通せたことも、職員にとって受入れやすかったのだと思います。
 つまり、夕張市の状況を近くでみていて、自主的に解決したいと考えたことが、スムーズな人員・人件費の削減につながったといえます。


【聞き手】結局人員削減と給与カットによる人件費抑制のみが主な再生手段だったように思えますが、雇用を離れた人達はどこに行ったのでしょうか?町を出て行った、あるいは年金など他の公的財政支援のカバリッジの下に移って行っただけなのでしょうか?


【柏木】 退職者95人のうち、8割以上は年金受給年齢に達していません。退職者の8割がほぼ全員民間企業に再就職しました。内訳は、7割が赤平市や近隣市町村の企業、残りは札幌市や帯広市などの大規模市町村の企業です。市役所からの斡旋はなく、皆さん自主的に就職活動されて再就職しました。地域に雇用吸収力があったことが大きいと思います。
 自治体によってはこのような状況に恵まれないところもあります。雇用が減って失業給付が増え、人口が減って税収が減るという状況に陥ることも考えられます。このような場合には、国や上位の自治体からの支援が欠かせないと思います。


【聞き手】赤平市の事例から他の市区町村の財政再建のために、どんな教訓が引き出せると思いますか?


【柏木】 赤平市が成功した最大の要因は、姿勢だと思います。
 自治体側が人員削減・給与カットなどの厳しい措置を取る一方で、市民税や保育料・下水道使用料の改定など市民負担を増やしました。行政が徹底して厳しい取組みを行い、その状況を公表し続け、そのうえで市民にも負担増を求めるという態度が、改革に対する市民の理解に繋がり、これを実現できたと言えると思います。
 また、早目の着手・実行が大切です。赤平市は、夕張市の破綻や健全化法の施行以前に、「あかびらスクラムプラン」という財政再建プランを作り上げていました(2005年)。これを状況に応じて「財政健全化計画」などに変更して行きましたが、最初に包括的な計画を作り上げ、それにすぐに着手・実行して行ったということが重要でした。
 そして、根本的な問題から解決しました。赤平市の場合、病院の赤字が一番の問題でした。その解決に注力したことが大きかったと思います。やはり問題を根源から立ち切ることが必要だと言えます。
 上に挙げた3点は、基本的な問題解決策だと思うので、どこの自治体でも行うことができると思います。財政問題の原因は地域によって特性が異なります。その特性を早くつかんで、根本的な問題は何かを特定し、それに対する対策を早期に策定し、断固として実行することが必要です。そのためには人材も必要です。場合によっては、国や上位の自治体または民間企業に人材を求めることも必要かもしれません。その場合でも、職員の協力と理解は絶対に必要です。身を切る覚悟で痛みを伴う解決を市民と共に進めていくという姿勢が大切だと思います。



論文全文は、こちらからご覧ください。

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