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2012.07.24

不思議な国の政党政治

WEBRONZA に掲載(2012年7月6日付)

 政党とは、主要な政策について意見を同じくする人たちの集まりである。我が国の国民・有権者だけでなく、世界中の人も同じように理解しているはずである。しかし、日本という国の千代田区永田町にある民主党という建物の中だけは、そのような理解が共有されていないようだ。
 消費税増税をめぐり、民主党が分裂した。離党した小沢元代表は民主党のマニフェストに消費税引上げを書いていないとして、増税反対の大義は我にありと主張した。しかし、小沢氏はマニフェストに掲げた政策の実現に政治生命をかけていたのだろうか?
 「コンクリートから人へ」の象徴だった八ッ場ダムの建設中止、高速道路無料化など、マニフェストの主要項目のほとんどは実現していない。マニフェストを重視すべきだと主張する実力者の小沢氏がその実現に努力した形跡は見られない。それどころか、2009年末幹事長だった小沢氏は鳩山首相に働きかけ、マニフェストにあったガソリン税の暫定税率廃止を事実上撤回させている。
 今回、小沢氏は「増税の前にやるべきことがある」と主張した。マニフェストで増税をしないというのも、16.8兆円の財源ねん出が前提だった。しかし、これまで、小沢氏が財源ねん出という「増税の前にやるべきこと」に努力した形跡はないし、今では、民主党の誰もが16.8兆円の財源ねん出は絵にかいたモチだったと認めている。マニフェストは、選挙で勝つことを目的とした、実現性も整合性もない政策のかき集めだった。
 小沢氏のグループは、消費税引上げにも、TPPにも、反対した。しかし、1994年国民福祉税を主張して消費税の引上げを主張したのは、小沢氏ではなかったのか?ガット・ウルグァイ・ラウンド交渉以来、一貫して農産物貿易の自由化を唱え、数年前の著書で、政府から戸別所得補償という補助金を農家に交付することで、「関税ゼロでも食料自給率100%」と主張したのは、小沢氏ではなかったのか?
 政策を実現するために権力を掌握するのである。かつて、小沢氏の「普通の国」という主張には、特定の政策目的のために政界を再編成するという響きがあった。そこには、これまでの日本の政治家からは伝わってこなかった新鮮な政治家像があった。しかし、現在の小沢氏の場合、選挙に勝つこと、権力掌握だけが自己目的化してしまったようだ。増税反対、原発反対を叫べば選挙で票が入ると考えているのではないだろうか。
 それでも、民主党と袂を分かった小沢氏たちの行動は政党人としては納得できる。基本となる政策について、意見や主張が異なる人が同じ党派を形成するのは、いかにも不自然だし、有権者を欺くものだからだ。
 しかし、理解できないのは、明確な意思を持って、社会保障・税一体改革関連法案に反対、棄権をした人たちが、依然民主党にとどまろうとすることだ。信念を持って反対したのであれば、民主党を離党すべきではないだろうか。「代表なければ課税なし」という言葉もある。国家統治の基本的事項である税について、基本的な意見を異にする人たちが同一の党派を形成するのは妥当ではない。それどころか、これらの議員は、30名近い政策集団を新たに立ち上げ、消費税増税反対等で連携していくことを確認している。かれらの多くはTPP参加にも、強く反対している。
 かれらは党員資格停止処分や厳重注意を受けている。政党としての組織上、好ましくない行為をしたからこそ、処分されたのに、自分たちの行為が好ましいものだと引き続き主張しているのである。鳩山元総理のように、他の議員よりも重い処分を受けながら、堂々と処分権者を非難している人もいる。小沢新党との連携を模索する動きや野党から内閣不信任案が提出されたら同調することを示唆する発言もある。こうなると、もはや政党とはいえない。
 現在の自民党も民主党も異なる意見を持つ人たちの寄り合い所帯である。他党の候補と政策や理念が違うから選挙に立候補するというのではなく、選挙区で自民党の候補がいるので、民主党から立候補するというパターンが多い。このため、両党とも、消費税引き上げやTPP参加という大きなテーマについて賛成派、反対派が存在する。
 両二大政党とも、大きな政策の下に意見を同じくする人たちが集まるという政党本来の体をなしていない。造反した議員のうち、民主党にとどまった人も離党した人も、次の選挙に勝つためには、どちらが有利かを考えたに違いない。
 賛成派、反対派のいずれの国会議員も自己の主義主張に忠実であろうとすれば、民主党、自民党とも壊して、新たな二大政党を作るしかない。民主党が割れることは悪いことではない。民主党の消費税増税反対派の人たちや自民党の中にも同じ意見を持っている人たちは、小沢新党に合流すべきだろう。野田総理や谷垣総裁のように、消費税増税やTPP参加に賛成する人たちは、民主党と自民党を合同させればよい。
 そうでなければ、政治のあいまいさが続くばかりだ。今、選挙が行われると、民主党、自民党とも、消費税増税を掲げることとなる。有権者は政党を選択できない。その上、民主党の中の増税反対議員に対して、有権者は、党の主張に投票するのか、議員の主張に投票するのか、という選択を迫られる。
 困るのは有権者である。改革か守旧かを軸としてまとまる新しい二大政党ができれば、有権者が政策で政党を選べる政治が実現できる。そのような政党再編が行われるまで、総選挙は行うべきではない。基本政策について異なる意見の人が同居する政党では、選挙をいくら重ねても、また今回のような泥仕合が繰り返されるばかりである。

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