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2012.07.04

政治と大義

新潟日報(2012年6月30日付)に掲載

 民主党が分裂状態に陥った。小沢元代表はマニフェストに消費税引き上げを書いていないとして、増税反対の大義は我(われ)にありと反対している。しかし、「コンクリートから人へ」の象徴だった八ッ場ダムの建設中止、高速道路無料化など、マニフェストの主要項目のほとんどは実現していない。マニフェストを重視すべきだと主張する実力者の小沢氏がその実現に努力した形跡は見られない。それどころか、岡田副総理が指摘したように、小沢氏は幹事長だった2009年末、鳩山首相にマニフェストにあったガソリン税の暫定税率廃止を事実上撤回させている。民主党が政権を取ったのは、マニフェストを国民が評価したのではない。一向に経済が上向かない自民党政権下での閉塞(へいそく)感に嫌気をさした国民が、別の政党にやらせてみようかと思っただけである。

 マニフェスト自体、高速道路無料化で排ガスを増やしながら、地球温暖化ガスの削減を主張するなど、整合性も実現性もないバラマキの政策集だった。増税をしないというのも、16・8兆円の財源ねん出が前提だった。これらは、選挙で勝つための方便であることは、政権奪取を至上目的とする小沢氏が一番認識していたのではないだろうか。

 小沢氏のグループは、消費税引き上げにも、TPPにも、反対した。しかし、1994年、国民福祉税を主張して消費税の引き上げを主張したのは、小沢氏ではなかったのか? ガット・ウルグァイ・ラウンド交渉以来、一貫して農産物貿易の自由化を唱(とな)え、数年前の著書で、政府から戸別所得補償という補助金を農家に交付することで、「関税ゼロでも食料自給率100%」と主張したのは、小沢氏ではなかったのか?

 日本の政治を長年取材してきた外国のジャーナリストは、小沢氏は特定の政策理念を実現するために活動をしてきたのに、今は何を目指しているのかさっぱり分からないと私に語った。政策を実現するために権力を掌握するのである。しかし、小沢氏の場合、選挙に勝つこと、権力掌握だけが自己目的化してしまったようだ。小沢氏は民主党の臨時代議士会を欠席した。表座敷で正面から野田総理と論戦するという気持ちはないようだ。

 公明党とともに消費税引き上げについて3党間で合意したのに、野田総理に解散を要求する自民党の主張も分かりにくい。2010年の参議院選挙で消費税引き上げを主張した自民党が、民主党の消費税引き上げをマニフェスト違反として攻撃し、選挙で信を問うべきだと主張している。

 では、解散、総選挙になったら、両党の主張はどうなるのか? 消費税引き上げについて、二大政党間では一致している。マニフェストにあった最低保障年金の創設や後期高齢者医療制度の廃止の棚上げはおかしいと自民党は主張するかもしれないが、これらについても国民会議で議論することに合意している。

 今の時点で両党に対立点、争点はない。二大政党とも消費税引き上げの確認を公約に掲げて選挙を争うとすれば、有権者はどちらの政党を選択すればよいのか。

 TPPに参加して、食料品の価格が低下すると、消費税を引き上げたとしても逆進性は緩和される。しかし、小沢氏のように、消費税引き上げに反対する議員のほとんどは、TPPにも反対である。しかも、有権者にとって不幸なのは、民主党にも自民党にも、消費税引き上げ、TPP参加という大きなテーマについて賛成派、反対派が存在することだ。両二大政党とも、大きな政策の下に意見を同じくする人たちが集まるという政党本来の体をなしていない。有権者にとっては、どの政党に投票すればよいのか、政党の選択ができない状態なのだ。

 賛成派、反対派のいずれの国会議員も自己の主義主張に忠実であろうとすれば、民主党、自民党とも壊して、新たな二大政党を作るしかない。民主党が割れることは悪いことではない。そうでなければ、政治のあいまいさが続くばかりだ。改革か守旧かを軸としてまとまる新しい二大政党ができれば、有権者が政策で政党を選べる真の政党政治が実現できるだろう。

山下 一仁 その他コラム・メディア掲載/論文・レポート

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