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2011.10.31

消費税10%は入り口にすぎず最終の税率は20~30%台か

週刊ダイヤモンド 「データフォーカス」 2011年10月15日号掲載

上昇する先進国、低下する途上国(政府債務の対GDP費の推移)

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 グラフは、OECDに加盟する先進国とそれ以外の途上国の政府債務について、最近の推移と今後の予測を示している(対GDP 比)。先進国では、高齢化が構造的に政府債務の増加をもたらしている。高齢化に対応した財政再建は先進国共通の課題といえる。
 こうしたなか、日本の財政再建はどこまで進むのだろうか。政権運営が順調に進めば、今後数年以内に消費税率を10%に引き上げることは実現するかもしれない。しかし、それで終わりではない。日本の財政学者やエコノミストは、社会保障費の削減とセットで消費税率を最終的に20~25%程度にすることが必要だと見ている。
 ところが、もっと悲観的な見方もある。近年、動学的一般均衡モデルを使って日本の財政の持続可能性を検証する研究がなされている。アトランタ連銀のリチャード・アントン・ブラウン氏らの分析では消費税率を最終的に33%にする必要があるという。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のゲイリー・ハンセン教授らも消費税率35%程度にしないと日本の財政の持続性は保てないという。ハンセン教授らは、35%への増税は国民の消費水準が恒久的に1.4%減少することと同等の社会的コストを生み出すと試算している。
 消費税の最終的な税率は、欧州並みの20%台でよいのか、30%台の超高率の増税が必要なのだろうか。最終的な税率は、社会保障費の削減いかんで大きく違ってくる。また、税率の推計の違いは、経済成長率、インフレ率、金利などの想定の違いで生み出される。
 経済学者、財政学者、財政当局は、お互いの財政シミュレーションの手法や結果を突き合わせて、税率の推計に差が生じる原因を解明するべきだろう。いずれにしても、「2010年代の半ばまでに消費税率を10%にする」とした税と社会保障の一体改革は、財政再建の入り口にすぎない。
 ところで、「増税は、デフレを悪化させる」という反対論が強い。しかし、財政再建は、内需を縮小させ、資金の対外流出を招くので、円安圧力になる。円安になれば輸出が増え、インフレ圧力が強まる。財政再建がデフレを緩和し、円安とインフレを招くのだとしたら、財政再建を先送りする理由はない。

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