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2011.10.20

医療費はいつ減り始めるか

『あらたにす』新聞案内人 2011年10月19日号に掲載

  • 松山 幸弘
  • 研究主幹
    松山 幸弘
  • [研究分野]
    財政・社会保障
 高齢者数増加による医療費膨張が続いている。しかし、少子高齢化の下ではいずれ、「高齢者数増加による医療費増加効果」を「人口減少による医療費減少効果」が上回り、医療費は減少に向かうことになる。

日本全体では2030年がピーク

 そのタイミングを、年齢階級別一人あたり医療費に年齢階級別将来人口推計を掛けることで試算してみた。その結果、2010年の医療費を1とした物価変動を考慮しない実質ベースで、日本全体では2030年の1.126倍まで増えた後、ピークアウトし、その後は減少に転じることが分かった。もちろんこれは日本全体での話であり、これを都道府県別に見ると様相が大きく異なる。医療費負担は自治体によってかなり差があるので、それぞれの動向をしっかり押さえておくことが、将来を見据えた医療行政のためには不可欠である。

秋田など3県は2015年に

 表1に都道府県の医療費総額の推移予測をまとめてみた。これをみると、沖縄、神奈川、東京、愛知、滋賀の5都県の場合、ピークは2035年以降であり、2035年時点の医療費は2010年の1.2倍以上の水準を保つ。これに対して、秋田、島根、高知の3県は早くも2015年から医療費が減少に転じる。2020年にピークとなる県も和歌山、山口をはじめ10県ある。この医療費ピークのタイミング格差は、市町村別に見ると一層顕著である。
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単独施設経営病院は縮小・消滅へ

 このように医療費減少が早期に始まる地域では、1つの病院しか持たない医療事業体の場合、もはや現在の病床数を維持するための建て替え投資ですら経営リスクが高すぎてできない。一方、事業規模縮小を選択すれば、医師や看護師が将来を心配して離反してしまう。 しかし、都道府県には、医療費減少の時代になっても住民が必要とする医療を提供する体制を維持する責任がある。そのためには、事業縮小消滅を余儀なくされる既存医療機関の機能を引き継いでいくことのできるセーフティネット医療事業体を知事のリーダーシップの下で創る必要がある。 このセーフティネット医療事業体は県立病院と市町村立病院を経営統合することで創ることが可能であり、新たな財源は必要ない。
 このことに気付いているある県立病院長から最近電話があった。「自分が院長をしている県立病院と近隣の市立病院の経営統合を県庁に持ちかけたが、県の担当者は目先の損得しか頭になく経営難の市立病院と一緒になることに否定的」とのことであった。
 これは、県の担当者が地域医療経営に必要な知見を欠いていることも一因である。だからこそ、知事自らが医療問題を勉強しリーダーシップを発揮すべきと思われる。

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