本文へスキップ

2011.05.24

垂直統合による「非営利メガ医療事業体」 そして公的医療保険にオプションを導入

「Visionと戦略」 2011年5月号に掲載

  • 松山 幸弘
  • 研究主幹
    松山 幸弘
  • [研究分野]
    財政・社会保障

 昨年、「医療改革と経済成長」を上梓、この中で医療改革論争の前提となっている常識を「誤り」として列挙し、改革として①既定路線である医療保険の都道府県単位への統廃合を早期に実施②公的保険にオプションを導入して選択の幅を拡げ追加財源を獲得③非営利メガ医療事業体を全国各地に創ることを提言している。話題の「医療ツーリズム」は市場規模が小さく、世界の潮流は既に「病院・医学部の直接輸出」になっている。 「医療を成長戦略に生かしたい」と真剣に考えるなら、年間医業収入が500億円以上の「非営利メガ医療事業体」を育成すべきと説く。キーワードは「連携」ではなく「統合」。垂直統合型日本版 IHNへの再編成である。


■「新成長戦略」はライフ・イノベーションにより「新規市場 50 兆円」「新規雇用 284 万人」を打ち出しています。

松山 高齢化を考えれば、医療・介護の市場は自然と拡大します。しかし市場規模や新規雇用の推計は難しく、少なくとも政府の出している数字には根拠があるようには思えません。むしろ大事なことは限られた財源の中で「如何により大きな付加価値を生み出す仕組みを作るか」という事にあります。この仕組み抜きで議論しても意味がありません。成長の柱として医療ツーリズムが掲げられていますが、現時点で見る限り、アジアで提供されている富裕層向け市場は1400億円程度しかありません。この全てを日本が担ったとしても規模は知れています。かつ現在この分野で実績を上げているアジアの病院グループは非常にパワーがあり、既に自国外で病院経営ができるノウハウを蓄積しています。残念ながら今の日本で、これに伍する事業体はないと思います。
 したがって、医療を経済成長のエンジンにしたいのであれば、今後急拡大が見込まれるアジアの医療市場に直接出ていく覚悟が求められます。日本の医療制度が世界に誇れるものであるなら、医療法人社団KNI理事長北原茂実氏が主張されるように、これもセットで輸出する仕組みを考えるべきです。経産省を中心にこの動きが始まっていますが、実際にトライするとなるとメガ医療事業体が必要です。ここがポイントになります。病院直接輸出のファイナンスができ、医療制度もセットで輸出できるようになれば、医療機器、医薬品メーカーにとっても非常に魅力的である筈です。そして現在のアジアの姿に捉われることなく、 10 年後、 20 年後のアジア医療市場を読んで今動くことが重要です。
 この「失われた 20 年」の間に、医薬品・医療機器の貿易赤字は急膨張しました。今や年間1兆数千億円の赤字と惨憺たる状況です。国際競争力が衰退し、海外から高い買い物をさせられています。しかし 10 年前には対米貿易収支で医薬品は黒字だったのです。ですから勝てないと思うのも、またおかしいのです。ただ、この赤字を縮小して将来黒字にするには、日本の医療提供体制を作り直さなければなりません。医薬品・医療機器の開発には「強い臨床現場」が不可欠だからです。これだけの差を付けられたのは開発企業と臨床現場、研究者が一緒になって切磋琢磨するメガ医療事業体という場がなかったからです。・・・・

→全文を読む 
 

垂直統合による「非営利メガ医療事業体」 そして公的医療保険にオプションを導入PDF:1.3 MB

松山 幸弘 その他コラム・メディア掲載/論文・レポート

松山 幸弘 その他コラム・メディア掲載/論文・レポートをもっと見る

マクロ経済 その他コラム・メディア掲載/論文・レポート

コラム・論文一覧へもどる